3話 白金之絵図(3)
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「早や遠い彼方に、右の和尚どの、形朦朧として、灰をば束ねたように見えました処、汽車が、ぐらぐらと揺れ出すにつけて、吹散った体になって消えました、と申すが、怪しいでは決してござらぬ。居所が離れ陰気な部屋の深いせいで、また寂い汽車でござったのでの。
さて、品川も大森も、海も畠も佳い月夜じゃ。ざんざと鳴るわの。蘆の葉のよい女郎、口吟む心持、一段のうちに、風はそよそよと吹く……老人、昼間息せいて、もっての外草臥れた処へ酔がとろりと出ました。寝るともなしに、うとうととしたと思えば、さて早や、ぐっすりと寝込んだて。
大船、おおふなと申す……驚破や乗越す、京へ上るわ、と慌しゅう帯を直し、棚の包を引抱いて、洋傘取るが据眼、きょろついて戸を出ました。月は晃々と露もある、停車場のたたきを歩行くのが、人におくれて我一人……
ひとつ映りまする我が影を、や、これ狐にもなれ、と思う心に連立って、あの、屋根のある階子を上る、中空に架けた高い空橋を渡り掛ける、とな、令嬢、さて、ここじゃ。
橋がかりを、四五間がほど前へ立って、コトコトと行くのが、以前の和尚。痩せに痩せた干瓢、ひょろりとある、脊丈のまた高いのが、かの墨染の法衣の裳を長く、しょびしょびとうしろに曳いて、前かがみの、すぼけた肩、長頭巾を重げに、まるで影法師のように、ふわりふわりと見えます。」
と云うとふとそこへ、語るものが口から吐いた、鉄拐のごとき魍魎が土塀に映った、……それは老人の影であった。
「や、これはそも、老人の魂の抜出した形かと思うたです、――誰も居ませぬ、中有の橋でな。
しかる処、前途の段をば、ぼくぼくと靴穿で上って来た駅夫どのが一人あります。それが、この方へ向って、その和尚と摺違うた時じゃが、の。」
与五郎は呼吸を吐いて、
「和尚が長い頭巾の頭を、木菟むくりと擡ると、片足を膝頭へ巻いて上げ、一本の脛をつッかえ棒に、黒い尻をはっと振ると、組違えに、トンと廻って、両の拳を、はったりと杖に支いて、
(横須賀行はこちらかや。)
追掛けに、また一遍、片足を膝頭へ巻いて上げ、一本の脛を突支棒に、黒い尻をはっと揺ると、組違えにトンと廻って、
(横須賀行はこちらかや。)
と、早や此方ざまに参った駅夫どのに、くるりと肩ぐるみに振向いた。二度見ました。痩和尚の黄色がかった青い長面。で、てらてらと仇光る……姿こそ枯れたれ、石も点頭くばかり、行澄いた和尚と見えて、童顔、鶴齢と世に申す、七十にも余ったに、七八歳と思う、軽いキャキャとした小児の声。
で、またとぼとぼと杖に縋って、向う下りに、この姿が、階子段に隠れましたを、熟と視ると、老人思わず知らず、べたりと坐った。
あれよあれよ、古狐が、坊主に化けた白蔵主。したり、あの凄さ。寂さ。我は化けんと思えども、人はいかに見るやらん。尻尾を案じた後姿、振返り、見返る処の、科、趣。八幡、これに極った、と鬼神が教を給うた存念。且つはまた、老人が、工夫、辛労、日頃の思が、影となって顕れた、これでこそと、なあ。」
与五郎、がっくりと胸を縮めて、
「ああ、業は誇るまいものでござる。
舞台の当日、流儀の晴業、一世の面目、近頃衰えた当流にただ一人、(古沼の星)と呼ばれて、白昼にも頭が光る、と人も言い、我も許した、この野雪与五郎。装束澄いて床几を離れ、揚幕を切って!……出る! 月の荒野に渺々として化法師の狐ひとつ、風を吹かして通ると思せ。いかなこと土間も桟敷も正面も、ワイワイがやがやと云う……縁日同然。」
十二
「立って歩行く、雑談は始まる、茶をくれい、と呼ぶもあれば、鰻飯を誂えたにこの弁当は違う、と喚く。下足の札をカチカチ敲く。中には、前番のお能のロンギを、野声を放って習うもござる。
が、おのれ見よ。与五郎、鬼神相伝の秘術を見しょう。と思うのが汽車の和尚じゃ。この心を見物衆の重石に置いて、呼吸を練り、気を鍛え、やがて、件の白蔵主。
那須野ヶ原の古樹の杭に腰を掛け、三国伝来の妖狐を放って、殺生石の毒を浴せ、当番のワキ猟師、大沼善八を折伏して、さて、ここでこそと、横須賀行の和尚の姿を、それ、髣髴して、舞台に顕す……しゃ、習よ、芸よ、術よとて、胡麻の油で揚げすまいた鼠の罠に狂いかかると、わっと云うのが可笑しさを囃すので、小児は一同、声を上げて哄と笑う。華族の後室が抱いてござった狆が吠えないばかりですわ。
何と、それ狂言は、おかしいものには作したれども、この釣狐に限っては、人に笑わるべきものでない。
凄う、寂しゅう、可恐しげはさてないまでも、不気味でなければなりませぬ。何と!」
とせき込んで言ったと思うと、野雪老人は、がっくりと下駄を、腰に支いて、路傍へ膝を立てた。
「さればこそ、先、師匠をはじめ、前々に、故人がこの狂言をいたした時は、土間は野となり、一二の松は遠方の森となり、橋がかりは細流となり、見ぶつの男女は、草となり、木の葉となり、石となって、舞台ただ充満の古狐、もっとも奇特は、鼠の油のそれよりも、狐のにおいが芬といたいた……ものでござって、上手が占めた鼓に劣らず、声が、タンタンと響きました。
何事ぞ、この未熟、蒙昧、愚癡、無知のから白癡、二十五座の狐を見ても、小児たちは笑いませぬに。なあ、――
最早、生効も無いと存じながら、死んだ女房の遺言でも止められぬ河豚を食べても死ねませぬは、更に一度、来月はじめの舞台が有って、おのれ、この度こそ、と思う、未練ばかりの故でござる。
寝食も忘れまして……気落ちいたし、心萎え、身体は疲れ衰えながら、執着の一念ばかりは呪詛の弓に毒の矢を番えましても、目が晦んで、的が見えず、芸道の暗となって、老人、今は弱果てました。
時に蒼空の澄渡った、」
と心激しくみひらけば、大なる瞳、屹と仰ぎ、
「秋の雲、靉靆と、あの鵄たちまち孔雀となって、その翼に召したりとも思うお姿、さながら夢枕にお立ちあるように思出しましたは、貴女、令嬢様、貴女の事じゃ。」
お町は謹で袖を合せた。玉あたたかき顔の優い眉の曇ったのは、その黒髪の影である。
「老人、唯今の心地を申さば、炎天に頭を曝し、可恐い雲を一方の空に視て、果てしもない、この野原を、足を焦し、手を焼いて、徘徊い歩行くと同然でござる。時に道を教えて下された、ああ、尊さ、嬉さ、おん可懐さを存ずるにつけて……夜汽車の和尚の、室をぐるりと廻った姿も、同じ日の事なれば、令嬢の、袖口から、いや、その……あの、絵図面の中から、抜出しましたもののように思われてなりませぬ。
さように思えば、ここに、絵図面をお展き下されて、貴女と二人立って見ましたは、およそ天ヶ下の芸道の、秘密の巻もの、奥許しの折紙を、お授け下されたおもい致す!
姫、神とも存ずる、令嬢。
分別の尽き、工夫に詰って、情なくも教を頂く師には先立たれましたる老耄。他に縋ろうようがない。ただ、偏に、令嬢様と思詰めて、とぼとぼと夢見たように参りました。
が、但し、土地の、あの図に、何と秘密が有ろうとは存じませぬ。貴女の、お胸、お心に、お袖の裏に、何となく教が籠る、と心得まする。
何とぞ、貴女の、御身からいたいて、人に囃され、小児たちに笑われませぬ、白蔵王の法衣のこなし、古狐の尾の真実の化方を御教えに預りたい……」
「これ、これ、いやさ、これ。」
「しばらく! さりとても、令嬢様、御年紀、またお髪の様子。」
娘は髪に手を当てた、が、容づくるとは見えず、袖口の微な紅、腕も端麗なものであった。
「舞、手踊、振、所作のおたしなみは格別、当世西洋の学問をこそ遊ばせ、能楽の間の狂言のお心得あろうとはかつて存ぜぬ。
あるいは、何かの因縁で、斯道なにがしの名人のこぼれ種、不思議に咲いた花ならば、われらのためには優曇華なれども、ちとそれは考え過ぎます。
それとも当時、新しいお学問の力をもってお導き下さりょうか。
さりとて痩せたれども与五郎、科や、振は習いませぬぞよ。師は心にある。目にある、胸にある……
近々とお姿を見、影を去って、跪いて工夫がしたい! 折入ってお願いは、相叶うことならば、お台所の隅、お玄関の端になりとも、一七日、二七日、お差置きを願いたい。」
「本気か、これ、おい。」と家主が怒鳴った。
胸を打って、
「血判でござる。成らずば、御門、溝石の上になりとも、老人、腰掛に弁当を持参いたす。平に、この儀お聞済が願いたい。
口惜や、われら、上根ならば、この、これなる烏瓜一顆、ここに一目、令嬢を見ただけにて、秘事の悟も開けましょうに、無念やな、老の眼の涙に曇るばかりにて、心の霧が晴れませぬ。
や、令嬢、お聞済。この通りでござる。」
とて、開いた扇子に手を支いた。埃は颯と、名家の紋の橘の左右に散った。
思わず、ハッと吐息して、羽織の袖を、斉く清く土に敷く、お町の小腕、むずと取って、引立てて、
「馬鹿、狂人だ。此奴あ。おい、そんな事を取上げた日には、これ、この頃の画工に頼まれたら、大切な娘の衣服を脱いで、いやさ、素裸体にして見せねばならんわ。色情狂の、爺の癖に。」
十三
「生蕎麦、もりかけ二銭とある……場末の町じゃな。ははあ煮たて豌豆、古道具、古着の類。何じゃ、片仮名をもってキミョウニナオル丸、疝気寸白虫根切、となのった、……むむむむ疝気寸白は厭わぬが、愚鈍を根切りの薬はないか。
ここに、牛豚開店と見ゆる。見世ものではない。こりゃ牛鋪じゃ。が、店を開くは、さてめでたいぞ。
ほう、按腹鍼療、蒲生鉄斎、蒲生鉄斎、はて達人ともある姓名じゃ。ああ、羨しい。おお、琴曲教授。や、この町にいたいて、村雨松風の調べ。さて奥床い事のう。――べ、べ、べ、べッかッこ。」
と、ちょろりと舌を出して横舐を、遣ったのは、魚勘の小僧で、赤八、と云うが青い顔色、岡持を振ら下げたなりで道草を食散らす。
三光町の裏小路、ごまごまとした中を、同じ場末の、麻布田島町へ続く、炭団を干した薪屋の露地で、下駄の歯入れがコツコツと行るのを見ながら、二三人共同栓に集った、かみさん一人、これを聞いて、
「何だい、その言種は、活動写真のかい、おい。」
「違わあ。へッ、違いますでござんやすだ。こりゃあ、雷神坂上の富士見の台の差配のお嬢さんに惚れやあがってね。」
「ああ、あの別嬪さんの。」
「そうよ、でね、其奴が、よぼよぼの爺でね。」
「おや、へい。」
「色情狂で、おまけに狐憑と来ていら。毎日のように、差配の家の前をうろついて附纏うんだ。昨日もね、門口の段に腰を掛けている処を、大な旦那が襟首を持って引摺出した。お嬢さんが縋りついて留めてたがね。へッ被成もんだ、あの爺を庇う位なら、俺の頬辺ぐらい指で突いてくれるが可い、と其奴が癪に障ったからよ。自転車を下りて見ていたんだが、爺の背中へ、足蹴に砂を打っかけて遁げて来たんだ。
それ、そりゃ昨日の事だがね。串戯じゃねえや。お嬢さんを張りに来るのに弁当を持ってやあがる、握飯の。」
「成程、変だ。」……歯入屋が言った。
「そうよ、其奴を、旦が踏潰して怒ってると、そら、俺を追掛けやがる斑犬が、ぱくぱく食やがった、おかしかったい、それが昨日さ。」
「分ったよ、昨日は。」
「その前もね、毎日だ。どこかで見掛ける。いつも雷神坂を下りて、この町内をとぼくさとぼくさ。その癖のん気よ。角の蕎麦屋から一軒々々、きょろりと見ちゃ、毎日おなじような独語を言わあ。」
「其奴が、(もりかけ二銭とある)だな、生意気だな、狂人の癖にしやあがって、(場末)だなんて吐しやがって。」と歯入屋が、おはむきの世辞を云って、女房達をじろりと見る奴。
「それからキミョウニナオル丸、牛豚開店までやりやがって、按摩ン許が蒲生鉄斎、たつじんだ、土瓶だとよ、薬罐めえ、笑かしやがら。何か悪戯をしてやろうと思って、うしろへ附いちゃあ歩行くから、大概口上を覚えたぜ。今もね、そこへ来たんぜ。」
「来るえ。」と、一所に云う。
「見ねえ、一番、尻尾を出させる考えを着けたから、駈抜けて先へ来たんだ。――そら、そら、来たい、あの爺だ――ね。」
と、琴曲の看板を見て、例のごとく、帽子も被らず、洋傘を支いて、据腰に与五郎老人、うかうかと通りかかる。
「あれ! 何をする。」
と言う間も無かった。……おしめも褌も一所に掛けた、路地の物干棹を引ぱずすと、途端の与五郎の裾を狙って、青小僧、蹈出す足と支く足の真中へスッと差した。はずみにかかって、あわれ与五郎、でんぐりかえしを打った時、
「や、」と倒れながら、激しい矢声を、掛けるが響くと、宙で撓めて、とんぼを切って、ひらりと翻った。古今の手練、透かさぬ早業、頭を倒に、地には着かぬ、が、無慚な老体、蹌踉となって倒れる背を、側の向うの電信柱にはたとつける、と摺抜けに支えもあえず、ぼったら焼の鍋を敷いた、駄菓子屋の小店の前なる、縁台に《どう》と落つ。
走り寄ったは婦ども。ばらばらと来たのは小児で。
鷺の森の稲荷の前から、と、見て、手に薬瓶の紫を提げた、美しい若い娘が、袖の縞を乱して駈寄る。
「怪我は。」
「吉祥院前の接骨医へ早く……」
「お怪我は?」
与五郎野雪老人は、品ある顔をけろりとして、
「やあ、小児たち、笑わぬか、笑え、あはは、と笑え。爺が釣狐の舞台もの、ここへ運べば楽なものじゃ――我は化けたと思えども、人はいかに見るやらん。」
と半眼に、従容として口誦して、
「あれ、あの意気が大事じゃよ。」
と、頭を垂れて、ハッと云って、俯向く背を、人目も恥じず、衝と抱いて、手巾も取りあえず、袖にはらはらと落涙したのは、世にも端麗なお町である。
「お手を取ります、お爺様、さ、私と一所に。」
十四
円に桔梗の紋を染めた、厳めしい馬乗提灯が、暗夜にほのかに浮くと、これを捧げた手は、灯よりも白く、黒髪が艶々と映って、ほんのりと明い顔は、お町である。
と、眉に翳すようにして、雪の頸を、やや打傾けて優しく見込む。提灯の前にすくすくと並んだのは、順に数の重なった朱塗の鳥居で、優しい姿を迎えたれば、あたかも紅の色を染めた錦木の風情である。
一方は灰汁のような卵塔場、他は漆のごとき崖である。
富士見の台なる、茶枳尼天の広前で、いまお町が立った背後に、
此の一廓、富士見稲荷鎮守の地につき、家々の畜犬堅く無用たるべきもの也。地主。
と記した制札が見えよう。それからは家続きで、ちょうどお町の、あの家の背後に当る、が、その間に寺院のその墓地がある。突切れば近いが、避けて来れば雷神坂の上まで、土塀を一廻りして、藪畳の前を抜ける事になる。
お町は片手に、盆の上に白い切を掛けたのを、しなやかな羽織の袖に捧げていた。暗い中に、向うに、もう一つぼうと白いのは涎掛で、その中から目の釣った、尖った真蒼な顔の見えるのは、青石の御前立、この狐が昼も凄い。
見込んで提灯が低くなって、裾が鳥居を潜ると、一体、聖心女学院の生徒で、昼は袴を穿く深い裾も――風情は萩の花で、鳥居もとに彼方、此方、露ながら明く映って、友染を捌くのが、内端な中に媚かしい。
狐の顔が明先にスッと来て近くと、その背後へ、真黒な格子が出て、下の石段に踞った法然あたまは与五郎である。
老人は、石の壇に、用意の毛布を引束ねて敷いて、寂寞として腰を据えつつ、両手を膝に端坐した。
「お爺様。」
と云う、提灯の柄が賽銭箱について、件の青狐の像と、しなった背中合せにお町は老人の右へ行く。
「やあ、」
もっての外元気の可い声を掛けたが、それまで目を瞑っていたらしい、夢から覚めた面色で、
「またしてもお見舞……令嬢、早や、それでは痛入る。――老人にお教へ下さると云うではなけれど、絵図面が事の起因ゆえ、土地に縁があろうと思えば、もしや、この明神に念願を掛けたらば――と貴女がお心付け下された。暗夜に燈火、大智識のお言葉じゃ。
何か、わざと仔細らしく、夜中にこれへ出ませいでもの事なれども、朝、昼、晩、日のあるうちは、令嬢のお目に留って、易からぬお心遣い、お見舞を受けまする。かつは親御様の前、別して御尊父に忍んで遊ばす姫御前の御身に対し、別事あってならぬと存じ、御遠慮を申すによって、わざと夜陰を選んで参りますものを、何としてこの暗いに。これでは老人、身の置きどころを覚えませぬ。第一唯今も申す親御様に、」
「いえ、母は、よく初手からの事を存じております。煩っておりませんと、もっと以前にどうにもしたいのでございますッて。ほんとうにお爺様、貴老の御心労をお察し申して、母は蔭ながら泣いております。」
「ああ、勿体至極もござらん。その儀もかねてうけたまわり、老人心魂に徹しております。」
「私も一所に泣くんですわ。ほんとうに私の身体で出来ます事でしたら、どうにもしてお上げ申したいんでございますよ。それこそね、あの、貴老が遊ばす、お狂言の罠にかかるために、私の身体を油でいためてでも差上げたいくらいに思うんですが……それはお察しなさいましよ。」
「言語道断」と与五郎は石段をずるりと辷った。
十五