海潮音

3話 海潮音 序(3)

507字 約1分 1999年7月1日 公開

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(おそ)るゝか死を。――(のど)(ふた)ぎ、

 おもわに狭霧(さぎり)

深雪(みゆき)降り、木枯荒れて、()るくなりぬ、

 すゑの近さも。

(よる)稜威(みいづ)暴風(あらし)襲来(おそひ)、恐ろしき

 敵の(たむろ)に、

現身(うつそみ)の「大畏怖(だいいふ)」立てり。しかすがに

 (たけ)き人は行かざらめやも。

それ、旅は果て、峯は尽きて、

 障礙(しようげ)()れぬ、

唯、すゑの(ほまれ)(むくい)えむとせば、

 なほひと(いくさ)

(たたかひ)は日ごろの(このみ)、いざさらば、

 (をはり)(はれ)の勝負せむ。

なまじひに(まなこ)ふたぎて、()るされて、

 ()ひ行くは()し、

(のこり)なく(あぢは)ひて、かれも人なる

 いにしへの猛者(もさ)たちのやう、

矢表(やおもて)に立ち楽世(うましよ)寒冷(さむさ)苦痛(くるしみ)暗黒(くらやみ)

 (みつぎ)のあまり捧げてむ。

そも勇者には、忽然(こつねん)(わざはひ)(ふく)に転ずべく

 (やみ)は終らむ。

四大(したい)のあらび、忌々(ゆゆ)しかる羅刹(らせつ)怒号(どごう)

 ほそりゆき、(まじ)りけち

変化(へんげ)して苦も(らく)とならむとやすらむ。

 そのとき光明(こうみよう)、その時御胸(みむね)

あはれ、心の心とや、(いだ)きしめてむ。

 そのほかは神のまにまに。

出現      ロバアト・ブラウニング

(こけ)むしろ、飢ゑたる岸も

  春来れば、

つと走る光、そらいろ、

  (すみれ)咲く。

村雲のしがむみそらも、

  こゝかしこ、

やれやれて影はさやけし、

  ひとつ星。

うつし世の命を(はぢ)

  めぐらせど、

こぼれいづる神のゑまひか、

  君がおも。

岩陰に     ロバアト・ブラウニング

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