『春と修羅』

47話 東岩手火山 栗鼠と色鉛筆

304字 約1分 2000年10月4日 公開

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樺の向ふで日はけむる

つめたい露でレールはすべる

靴革の料理のためにレールはすべる

朝のレールを栗鼠は横切る

横切るとしてたちどまる

尾は der Herbst

 日はまつしろにけむりだし

栗鼠は走りだす

  水そばの苹果緑(アツプルグリン)と石竹(ピンク)

たれか三角やまの草を刈つた

ずゐぶんうまくきれいに刈つた

緑いろのサラアブレツド

  日は白金をくすぼらし

  一れつ黒い杉の槍

その早池峰(はやちね)と薬師岳との雲環(うんくわん)は

古い壁画のきららから

再生してきて浮きだしたのだ

  色鉛筆がほしいつて

  ステツドラアのみじかいペンか

  ステツドラアのならいいんだが

  来月にしてもらひたいな

  まああの山と上の雲との模様を見ろ

  よく熟してゐてうまいから

(一九二二、一〇、一五)

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