10話 四つの都 一〇 もとの座席。
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庄平が戻って来ると、節子は相変らず詰将棋を考えている。庄平、医療器具をしまってから、ヒョイと手を伸し、
庄平「それは、こう詰めるんです」
瞬く間に詰めてしまう。
節子「そうでしたわね、角を捨てるのが判らなかったのですわ」
庄平「簡単ですよ、その詰将棋は」
節子「あのゥ、一番教えて頂けません?」(もじもじして言う)
庄平「こっちが負けるかも知れないが……」
庄平、トランクをおろして、それを自分の膝と節子の膝の間へ橋渡しする。そして、その上へ将棋盤を置く。
庄平(駒を並べながら)「然し、どうして将棋なんか知ってられるんです」
節子(駒を並べながら)「父に教わりましたの、私達はハワイの田舎にいたものですから、将棋をする相手がなくって、それで私を相手に……」
庄平「ハワイ仕込みの将棋ですな」
節子「駒を並べているとなくなった父を想いだしますわ、父は昨年なくなりましたの。ですから、私一人ぽっちで、この間の交換船で帰って参りましたの」
庄平「ほう? ……さあ、やりましょう」
節子「私が先手」
庄平「あ、あなたの飛車と角と入れ換ってますよ」
節子(頭に手をやる)「あら、御免なさい」
慌てゝ駒を置きかえる。
そして、指し始めるが、庄平は頻りに首をひねって呟く。
庄平「おかしい、どうもおかしい」
節子「? …………」
庄平(いきなり叫ぶ)「あ、間違ってた、僕の方が入れ換ってる」
節子、くっ/\と笑う。
庄平、角と飛車の位置を置きかえる。