四つの都

10話 四つの都 一〇 もとの座席。

597字 約1分 2013年7月30日 公開

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庄平が戻って来ると、節子は相変らず詰将棋を考えている。庄平、医療器具をしまってから、ヒョイと手を伸し、

庄平「それは、こう詰めるんです」

瞬く間に詰めてしまう。

節子「そうでしたわね、角を捨てるのが判らなかったのですわ」

庄平「簡単ですよ、その詰将棋は」

節子「あのゥ、一番教えて頂けません?」(もじもじして言う)

庄平「こっちが負けるかも知れないが……」

庄平、トランクをおろして、それを自分の膝と節子の膝の間へ橋渡しする。そして、その上へ将棋盤を置く。

庄平(駒を並べながら)「然し、どうして将棋なんか知ってられるんです」

節子(駒を並べながら)「父に教わりましたの、私達はハワイの田舎にいたものですから、将棋をする相手がなくって、それで私を相手に……」

庄平「ハワイ仕込みの将棋ですな」

節子「駒を並べているとなくなった父を想いだしますわ、父は昨年なくなりましたの。ですから、私一人ぽっちで、この間の交換船で帰って参りましたの」

庄平「ほう? ……さあ、やりましょう」

節子「私が先手」

庄平「あ、あなたの飛車と角と入れ換ってますよ」

節子(頭に手をやる)「あら、御免なさい」

慌てゝ駒を置きかえる。

そして、指し始めるが、庄平は頻りに首をひねって呟く。

庄平「おかしい、どうもおかしい」

節子「? …………」

庄平(いきなり叫ぶ)「あ、間違ってた、僕の方が入れ換ってる」

節子、くっ/\と笑う。

庄平、角と飛車の位置を置きかえる。

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