11話 四つの都 一一 中瀬古家(庄平の家)の一室(――大阪)
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将棋盤を真中に、庄平と父の庄造が向い合っている。庄平は和服である。
庄平「どうもこりゃ僕の負けですな」
庄造「そんな事はあるまい」
にや/\して、煙草を吹かしている。
庄平、暫らく盤にかじりついて盤面を凝視しているが、やがて顔を上げて、
庄平「しのぎがありません、これ迄です」
駒を投ずる。
庄造「まあ、そんな処かな、弱くなったな、どうしたんだ、戦地でもやったんだろう」
庄平「親孝行です」
庄造「帰還第一日に親父に将棋を負ける、これ即ち親孝行という事にはならんよ」
両人、笑う。