四つの都

16話 四つの都 一六 京都。

503字 約1分 2013年7月30日 公開

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バスの通る町。

「あ、待ってくれ」

と、一人の産業戦士風の男が叫びながらトランクをかゝえて、駈け出して来る。

船山という傷痍軍人である。

船山「そのバス待ってくれ!」

駈け出しながら、バスの窓へ向って、

船山「軍医殿、中瀬古中尉殿!」

と、叫ぶ。

バスの中では――

庄平が窓を開けて、顔を出す。

庄平(船山に気づいて)「おう、船山上等兵!」

船山はいきなり立ち停って、敬礼する。

その隙にバスは遠ざかる。船山慌てゝ後を追う。

庄平(怒鳴る)「走っちゃ駄目だ! 走るな!」

船山はきかず、走って来る。

庄平「停れ! 船山上等兵停れ! 停らんか!」

その拍子にバスは停る。しかし、そこは停るべくして停る停留所である。車内笑う。

庄平、急いでバスを降りると、神妙に停っている船山の方へ、走って行く。

船山、挙手の礼をする。庄平、応ず。

船山「軍医殿、久し振りであります」

庄平「うん、その後身体の方はどうだ?」

船山「至極健康であります、その節は野戦病院で軍医殿にいろ/\御厄介になり、申し訳ありません」

庄平「健康で何よりだ、しかし、何といっても病後だからな、走ったり、無理な事をしてはいかん」

船山「走らないと、軍医殿のバスを見失いそうでありましたから」

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