四つの都

17話 四つの都 一七 二条駅附近の通。

642字 約1分 2013年7月30日 公開

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庄平「で、いよ/\今日神戸の工場へ行くという訳だな」

船山「はッ、もう西陣で織物をやってる時代やないと思いまして……」

庄平「駅まで送って行こう」

船山「はッ、見送っていたゞけますか」

庄平「うん、そのうち神戸へ行ってやるよ。お前の身体を一度診察してやろう」

船山「はッ、有難うございます、もう身体の方は大丈夫や思いますけど、神戸の工場へ軍医殿がおいでやすのは嬉しいであります」

踏切の遮断機が降りたので、二人は立ち止って待つ。

上りの汽車が行ってしまう。

と、踏切の向う側に、辻節子の姿が突然現れている。

節子「あ、軍医さん」

と、気づき、線路を渡ってこちらへ来ようと思うのだが、遮断機が依然として降りたまゝなので、来られない。(下りの汽車が間もなく通過するのだ)

庄平「やあ、また会いましたね」(と大声を出す)

節子「京都でお会い出来るとは思いませんでしたわ、昨日奈良でお眼に掛ったばかしですもの」(とこれも少し大きな声で言う)

汽笛の音。

庄平「はあ?」

聞えないのだ。

節子「今日も療養所へいらっしゃいますの?」

庄平「今日は大学病院です……あなたはまた迷子じゃないですか」

汽笛の音。

節子「はあ?」

聞えない。

節子「私、仏像の行方を探して歩いてるんですの」

汽笛の音。

庄平「えっ? 何です?」

節子「仏像を探して……」

汽車通る。汽車に遮られて、お互い相手が見えなくなる。汽車が通過してしまうと、節子、庄平の方を見て、驚く。庄平も船山もいつの間にか姿を消してしまっているのである。

節子の寂しい顔。汽笛の音。踏切ひらく。

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