17話 四つの都 一七 二条駅附近の通。
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庄平「で、いよ/\今日神戸の工場へ行くという訳だな」
船山「はッ、もう西陣で織物をやってる時代やないと思いまして……」
庄平「駅まで送って行こう」
船山「はッ、見送っていたゞけますか」
庄平「うん、そのうち神戸へ行ってやるよ。お前の身体を一度診察してやろう」
船山「はッ、有難うございます、もう身体の方は大丈夫や思いますけど、神戸の工場へ軍医殿がおいでやすのは嬉しいであります」
踏切の遮断機が降りたので、二人は立ち止って待つ。
上りの汽車が行ってしまう。
と、踏切の向う側に、辻節子の姿が突然現れている。
節子「あ、軍医さん」
と、気づき、線路を渡ってこちらへ来ようと思うのだが、遮断機が依然として降りたまゝなので、来られない。(下りの汽車が間もなく通過するのだ)
庄平「やあ、また会いましたね」(と大声を出す)
節子「京都でお会い出来るとは思いませんでしたわ、昨日奈良でお眼に掛ったばかしですもの」(とこれも少し大きな声で言う)
汽笛の音。
庄平「はあ?」
聞えないのだ。
節子「今日も療養所へいらっしゃいますの?」
庄平「今日は大学病院です……あなたはまた迷子じゃないですか」
汽笛の音。
節子「はあ?」
聞えない。
節子「私、仏像の行方を探して歩いてるんですの」
汽笛の音。
庄平「えっ? 何です?」
節子「仏像を探して……」
汽車通る。汽車に遮られて、お互い相手が見えなくなる。汽車が通過してしまうと、節子、庄平の方を見て、驚く。庄平も船山もいつの間にか姿を消してしまっているのである。
節子の寂しい顔。汽笛の音。踏切ひらく。