四つの都

22話 四つの都 二二 名曲堂。

316字 約1分 2013年7月30日 公開

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鶴三が奥から銭湯行きの姿で出て来て、葉子に話しかける。葉子は店の間に置いた小鳥に餌をやっている。

鶴三「どうだ? 鳴いたか」

葉子「ちっとも鳴けへんわ、新坊行ってしもてから、鳴かんようになった」

鶴三「おかしいな。……あ、夕刊がはいった」

鶴三は新聞を拾って、表へ出て、新聞配達の少年の後ろ姿を見送る。標札屋の老人が店から鶴三に声を掛ける。

標札屋「新ぼん、今頃どないしとるかな」

鶴三「一生懸命働いとるに決っとる、新坊も今は少年工だ」

標札屋「お父つぁんのお前は棒鱈だが、息子はお国の役に立っとるわけや」

鶴三「おれが棒鱈なら、お前は鯡(〔ニシン〕)だ、どら風呂へでも行って来るかな」

鶴三、新聞を畳んで懐へ入れて、歩きかけ、

鶴三「おや、やんだようだ」

傘を畳む。

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