四つの都

28話 四つの都 二八 名曲堂の奥座敷。

529字 約1分 2013年7月30日 公開

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庄平が鶴三を診察している。

鶴三「どうです? 私の身体は? まだまだ働けますか?」

庄平「大丈夫です、いゝ身体ですよ」

鶴三(微笑する)「なにしろ、十二の歳から四十五まで、船乗りをしてきたえて来た身体ですからね」

庄平「それがまたどうして……?」

鶴三「なァに気楽な商売をと考えたんですよ、陸へ上った時にね、コックの腕に覚えがあるんではやらぬ洋食屋をやったり、こんな柄にもないレコード屋をやったり……今にして想えば、もっと身体を責めて働かなきゃならなかったんですよ。こんな隠居みたいな商売してちゃ、あなた身体の肉と骨がバラ/\に離れてしまいますよ、隣の鯡親爺も私を棒鱈だといってますが、全くこれじゃ棒鱈です。で、私も今はいろ/\考えてるんです」

庄平「すこし胃拡張のようですな」

鶴三「へえ? もう手遅れですか」

鶴三、がっかりする。

庄平「なに、大したことはありません」

鶴三「働く分にゃ……」

庄平「差し支えありません、こんど来る時、何か適当な薬をつくって来てあげましょう」

鶴三「どうも、初めて来て戴いたあなたに、身体をみて貰ったり、薬を戴いたり恐縮ですな」

庄平「これが商売です、じゃ今日は……」

庄平起ち上りかける。

葉子、現われて、

葉子「あら、もう帰りはりますの?」

寂しい顔。

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