四つの都

7話 四つの都 七 汽車の中。

433字 約1分 2013年7月30日 公開

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鶴三「風邪を引くんじゃねえぞ」

と、新吉に言いきかせている。新吉頷く。

鶴三「一日休めば一日増産が遅れる、工場へはいって風邪で休んだといっても父っちゃんはきかねえよ」

風呂敷包から怪しげな薬の袋を取出して来て、

鶴三「お腹が痛くなったらな、この陀羅尼助(だらすけ)という薬を服むんだ、一寸苦いがよう効くぞ!」

新吉頷く。日月ボールを頻りに弄ぶ。

鶴三「きいてるな」

新吉「うん」

鶴三「家を恋しがるんじゃねえぞ、父っちゃんは十二の歳から船に乗ってたが、印度洋の真中でも、大西洋を渡る時でも、太平洋の上でも、一遍だって家を恋しがった事はなかったぞ」

新吉「あ、汽車が停った」

窓をあける。

駅員の声(マイクを通して)「米原。米原。五分間停車、北陸線乗換え、敦賀、直江津、新潟方面行の方は右の階段を登って、三番線の列車にお乗換え願います、乗換時間は十七分、十六時五十分発二三等急行東京行き! 東京行き! この列車にお乗りの方は……」

鶴三「弁当買おうか」

窓から顔を出す。

新吉「あ、向うにも汽車が停ってる!」

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