7話 四つの都 七 汽車の中。
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鶴三「風邪を引くんじゃねえぞ」
と、新吉に言いきかせている。新吉頷く。
鶴三「一日休めば一日増産が遅れる、工場へはいって風邪で休んだといっても父っちゃんはきかねえよ」
風呂敷包から怪しげな薬の袋を取出して来て、
鶴三「お腹が痛くなったらな、この陀羅尼助という薬を服むんだ、一寸苦いがよう効くぞ!」
新吉頷く。日月ボールを頻りに弄ぶ。
鶴三「きいてるな」
新吉「うん」
鶴三「家を恋しがるんじゃねえぞ、父っちゃんは十二の歳から船に乗ってたが、印度洋の真中でも、大西洋を渡る時でも、太平洋の上でも、一遍だって家を恋しがった事はなかったぞ」
新吉「あ、汽車が停った」
窓をあける。
駅員の声(マイクを通して)「米原。米原。五分間停車、北陸線乗換え、敦賀、直江津、新潟方面行の方は右の階段を登って、三番線の列車にお乗換え願います、乗換時間は十七分、十六時五十分発二三等急行東京行き! 東京行き! この列車にお乗りの方は……」
鶴三「弁当買おうか」
窓から顔を出す。
新吉「あ、向うにも汽車が停ってる!」