妖人ゴング

24話 名探偵の奥の手

2,273字 約5分 2017年12月15日 公開

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 マユミさんと俊一君は、しかたがないので、縁がわに腰かけている明智の上半身を、ほそびきでぐるぐると巻きつけました。

 ゴングは、ピストルをかまえながら、そのそばにより、ほんとうにしばってあるかどうかをたしかめ、ほそびきの結びめを、いっそうかたく締めつけるのでした。

「明智先生、きのどくだが、おれの勝ちだね。マユミと俊一は、おれがつれていくよ。いなかじいさんに手をひかれた、いなか者のきょうだいだ。だれもあやしむものはない。さあ、ふたりとも、こっちへきなさい。」

 ゴングのいなかじいさんは、急にやさしい顔になって、ふたりの手をとろうとしました。

 すると、そのとき、みょうなことが起こったのです。

 クックックックッ……というような、へんな音が聞こえてきました。おやっと思って耳をすますと、その音は、からだをしばられて、うつむいているしらひげの口から、もれているようです。

 その音が、だんだん大きくなってきました。明智の老人が、首をあげました。おかしくてたまらないという顔つきです。笑いをかみころしていたのです。それが、とうとう爆発しました。

「ワハハハハ……、きみのほうに奥の手があれば、ぼくのほうにだって、いろいろ奥の手があるんだよ。小林君。かつらを取って、見せてやりたまえ。」

 それを聞くと、いなかむすめのマユミさんが、両手を頭にあげて、女のかつらを、スッポリとぬいでみせました。女の子だとばかり思っていたのが、じつは、男の子の変装だったのです。

「ハハハハ……。どうだね、また、いっぱい食ったね。小林君は、このあいだ、マユミさんに変装して、きみにひどいめにあったばかりだ。おなじトリックに、二度もかかるなんて、ゴングも、もうろくしたもんだね。

 それから、この子ども、俊一君じゃないよ。俊一君によく似た子どもをさがしだして、ここへつれてきたのさ。ハハハハ……。どうだね、せっかく、ぼくをしばっても、マユミさんと俊一君がにせものでは、なんにもならなかったね。

 いや、そればかりじゃない。ぼくの奥の手は、まだあるんだよ。ほら、見てごらん。ぼくは、縄ぬけの名人だからね。」

 しらひげの老人は、そういって、すっくと立ちあがったかとおもうと、しばられていた両手を、ヌッとつきだしてみせました。ほそびきは胴体に、ぐるぐる巻きになっていますが、両手がぬけてしまったのですから、もうなんの不自由もありません。

 勝ちほこっていたゴングのいなかじいさんは、このふいうちに、あっけにとられて、ピストルを持つ手も、だらりとたれたまま、ぼんやりつっ立っていました。

 きびんな小林少年が、それを見のがすはずはありません。女の寝まきをきた小林君のからだが、(ちゅう)におどりました。

「あっ、ちくしょう!」

 いなかじいさんが、どなったときには、もうピストルは、小林君の手ににぎられていました。ふいをうって、ピストルをうばい取ってしまったのです。

 小林君は、そのピストルをかまえて、ゴングにねらいをさだめました。こんどは、ゴングじいさんのほうが、両手をあげる番でした。

 しかし、ゴングもさるものです。いちじはおどろいたようですが、たちまち、気力をとりもどして、にやにや笑いだしました。

「ウフフフ……、で、どうしようというのだね。ピストルをうつのかね。だが、きみには、うてないのだよ。うてば、おれが死ぬんだからね。きみたちは、人ごろしなんか、できっこないよ。では、ピストルでおどかして、おれをしばろうとでも、いうのかね。ところが、それもだめだよ。おれは、しばられないからね。おれはもう、このうちに用事はないから、おいとまをするばかりだ。それじゃあ、あばよ。」

 ゴングのじいさんは、相手がピストルをうつはずはないとたかをくくって、いけがきのしおり戸のほうへ、ゆうゆうと歩いていくのでした。

「待ちたまえ!」

 明智探偵が、自信にみちた、おもおもしい声で呼びかけました。ゴングじいさんは、思わず立ちどまって、こちらをふりむきます。

「きみ、あれが聞こえないかね。ほら、だんだん、近づいてくるじゃないか。ぼくのほんとうの奥の手というのは、これなんだよ。」

 明智は、にこにこ笑っていました。

 ゴングじいさんの顔が、まっさおになりました。いけがきのむこうから聞こえてくる音が、恐ろしい意味をもっていたからです。

 それは、自動車の音でした。いけがきのむこうに、その黒いボディが見えたかとおもうと、キーンというブレーキの音がして、しおり戸の前に自動車がとまり、そのドアがひらいて、三人の警官が、手に手にピストルを持って、とびだしてくるのが見えました。

 立ちすくんだゴングじいさんのうしろから、明智の声がひびきます。

「わかったかね。きみはもう、のがれられないのだ。無電をそなえつけるひまがなかったので、伝書バトでまにあわせたのだ。さっき、きみが裏のほうへまわっているすきに、ぼくは、伝書バトを飛ばした。近くの町の警察署でかっている伝書バトだよ。

 ハトは十分間で警察へ飛んでいった。ハトの足には、ゴングがきたという手紙をいれた通信筒がつけてあった。そこで、警官の出動となったのだよ。ぼくは、いろんなことをいって、きみをひきとめ、この自動車がくるのを待っていたのさ。」

 三人の警官は、もう、しおり戸をあけてはいってきました。

 ああ、妖人ゴングは、とうとう、つかまってしまうのでしょうか。

 しかし、相手は魔法つかいのような怪物です。まだ、どんな奥の手が残っていないともかぎりません。なんだか心配です。胸がドキドキしてきます。

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