十和田湖

4話 三(2)

280字 約1分 2016年9月1日 公開

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 読者(どくしや)よ、かくの(ごと)きは(みづうみ)宮殿(きうでん)(いた)(きざはし)の一(だん)()ぎない。()片扉(かたとびら)にして、(うつ)()たる一(けい)さへこれである。五(さい)(さゞなみ)鴛鴦(おしどり)(うか)べ、(おき)(いはほ)羽音(はおと)とゝもに()(はな)ち、千(じん)断崖(がけ)(とばり)は、藍瓶(あゐがめ)(ふち)()まつて、(くろ)(ゐもり)()(たけ)大蛇(おろち)(ごと)きを(しづ)めて(くら)い。数々(かず/\)深秘(しんぴ)と、凄麗(せいれい)と、荘厳(さうごん)とを(おも)はれよ。

 ――いま、()奥殿(おくでん)(いた)らずとも、真情(まごゝろ)(つう)じよう。湖神(こしん)のうけ(たま)ふと(いな)とを(はか)らず、(わたし)(きざはし)に、かしは()()つた。

 ひそかに(おも)ふ。(みづうみ)全景(ぜんけい)は、月宮(げつきう)よりして、(みき)(むらさき)()(みどり)なる、(たま)(えだ)より、金色(こんじき)(をの)()つて(なげう)つたる、(おほい)なる胡桃(くるみ)()の、割目(われめ)(あを)(つゆ)(たゝ)へたのであらう。まつたく一寸(ちよつと)胡桃(くるみ)()()る。(完)

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