11話 トラのゆくえ
読み方を変える
こんどは、魔法博士が、さきに立っているのですから、道しるべのひもなんかなくっても、だいじょうぶです。少年たちは、なんなく、鍾乳洞の外に出ました。
「黄金のトラのかくし場所を、おしえてあげるから、こちらへ、おいで。」
魔法博士は、そういって、山小屋のほうへ、おりていきます。
山小屋へ近づいたとき、さきに歩いていたノロちゃんが、びっくりしたように立ちどまりました。
「あらっ、へんなやつが、のぞいている!」
山小屋のうしろから、ヒョイとのぞいた人間の顔が、その声におどろいて、ひっこんでしまいました。なんだか、ひげむじゃのきたない顔で、山男のようなやつでした。
「ハハハ……、あれはきみたちの、よく知っている人だよ。おい、もういいから、出てきなさい。」
魔法博士によばれて、小屋のかげから、ノッソリあらわれたのを見ると、その男は背広のうえに、ネズミ色のオーバーをきて、りっぱな紳士のふうをしています。それでいて、顔だけが、山男のようにきたないのです。なんだか、気味のわるいやつです。いったい、だれなのでしょう。
「ハハハ……、まだわからないかね。これが、ほんとうの山小屋のじいさんだよ。わしが、このじいさんにばけて、きものをかりたので、じいさんは、わしの服をきているのさ。」
魔法博士の説明で、やっと、わけがわかりました。そういえば、博士のほうも、ピンとはねた口ひげのある顔ににあわない、きたない服をきているのです。
「黄金のトラは、いったい、どこにかくしてあるんですか。」
井上少年が、前に出てたずねました。
「うん、それはね、さっき、きみたちがここへきたとき、わしは、じいさんにばけて、キセルでタバコをすっていたね。おぼえているかい。その目の前にあったのさ。いまでも、きみたちの目の前にあるんだよ。」
魔法博士は、にやにやと笑いました。
少年たちは、それをきくと、山小屋のなかにあがりこんで、せまい部屋を探しまわりましたが、どうしても、見つけることができません。
「ハハハハ……、戸だなや、ひきだしを探したって、だめだよ。ほら、きみたちのすぐ目の前にあるんだ。わしが、どこでタバコをすっていたか思いだしてごらん。いろりの前だったね。いろりには、火がなくて灰ばかりだったね。
ほら、よく見たまえ。このいろりの灰のなかに、ピカッと光ったものが、見えるじゃないか。」
魔法博士は、ひばしでいろりのすみを、さししめしました。そこの灰のなかに、画ビョウのあたまほどの小さい金色のものが、光っているのです。
「ほら、これが黄金のトラの、しっぽのさきだよ。
どうだね、黄金のトラは、ちゃんと、きみたちの目の前にあっただろう。よくおぼえておきたまえ。ものをかくすときは、あいてが、まさかと思うような場所へ、わざと、ほうり出しておくのが、いちばん、うまいかくしかたなんだよ。」
博士は、そういって灰のなかから、キラキラ光る黄金のトラを取りだし、てのひらの上にのせて、ながめるのでした。
「さあ、もう一度、これを、きみたちに渡すから、こんどは、もっとうまくかくしてごらん。きみたちが、いくら知恵をしぼっても、わしは魔法の力で、すぐに盗みだしてみせる。それをまた、きみたちが探すのだ。さいしょから二ヵ月という約束だから、まだ、じゅうぶん日にちがある。そのあいだに、これを取りかえせば、やっぱり、きみたちの勝ちになるのだよ。」