12話 午後四時
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その夕方、小林団長と九人の少年探偵団員は、明智探偵事務所に帰って、明智先生に、きょうのできごとを、くわしく報告しました。すると、明智探偵は、
「うん、きみたちも、よくやったが、魔法博士も、なかなか、うまくかくしたね。こんどはまた、きみたちの番か。うんと知恵をしぼって、うまいかくしかたを考えるんだね。」
そこで、黄金のトラは、ひとまず明智先生にあずけておいて、少年たちは、それぞれうちに帰り、晩のごはんをたべてから、また探偵事務所に集まり、秘密会議をひらきました。
さいしょ集まった十五人の少年のうち、鍾乳洞へ行かなかった五人には、電話をかけてよび集め、応接室の大テーブルをかこんで、相談をはじめました。
厳重な秘密会議です。十五人の少年のうち、事務所の前と、裏口に、ふたりずつ、応接室のドアの前と、窓の外の庭に、ひとりずつ、つごう六人の団員が見はりに立ち、のこる九人で、ヒソヒソと相談をしたのです。
これだけ用心をすれば、いかな魔法博士も、しのびこむことはできません。さて、少年たちは、どんな名案を考えついたのでしょうか。
九人の少年が、長いあいだ相談して、黄金のトラのかくし場所をきめました。そして、九人のなかの今井君と坂口君のうちが、かくし場所にえらばれたのです。今井君のうちはセトモノ屋さん、坂口君は金庫屋さんです。今井君のお店のたなの上には、セトモノの、いろいろな動物のオモチャが、たくさんならんでいました。
黄金のトラを、えのぐでぬりつぶして、セトモノのトラに見せかけ、そのオモチャの動物たちのなかへ、まぜておくのです。魔法博士は、「目の前に、ほうり出しておくのが、いちばんうまい、かくしかただ。」といいました。少年たちは、さっそく、それを、おうようしたのです。まさか、だいじな宝物を店さきへならべておくなんて、だれも気がつかないでしょう。
それから、今井君のお店の動物のオモチャのなかから、黄金のトラによくにた、セトモノのトラを持ってきて、それを、だいじそうにわたでくるんで、小さい箱に入れ、坂口君のお店の金庫のなかへかくしました。
坂口君のお店には、たくさん金庫がならんでいますが、地下室に、いちばん大きい金庫がおいてあるので、そのなかへ、かくすことにしたのです。
今井君のお店の、ほんもののトラのほうは、だれも見はりをしないで、ほうっておきましたが、坂口君のお店の地下室には、少年探偵団員が、ふたりずつかわりあって、たえず見はりばんをしました。夜も坂口君と少年店員とが、地下室の金庫のまえに長いすをならべて、そこで、やすむことにしました。にせもののトラを、なぜそんなにだいじにするのでしょう。
いうまでもなく、敵をあざむく計略です。そうして、さもだいじそうに見はりをして、黄金のトラが、その金庫にかくしてあると、魔法博士に思いこませるためです。
この計略は、まんまと成功しました。にせもののトラを金庫にかくしてから二日めに、坂口君のところへ、みょうな電話がかかってきたのです。
少年店員が、「学校の先生から電話です。」といって、よびに来ましたので、坂口君は、なにげなく電話口に出ますと、ぶきみなしわがれ声が聞こえてきました。
「ずいぶん厳重に、けいかいしているね。ウフフフ、だが、わしはトラをもらいにいくよ。あすの午後四時だ。きっと盗みだしてみせるから、せいぜい用心するがいい。」
坂口少年は、すぐにそのことを、電話で小林団長に報告しました。そして、あくる日の午後には、このまえ鍾乳洞を探検した少年のうちの八人が、坂口君のうちの地下室に集まり、金庫の見はりをすることになりました。小林団長と、セトモノ屋の今井君だけは、どこへいったのか、姿を見せません。それには、なにか、わけがあったのでしょう。
八人の少年のうちには、坂口君はもちろん、力のつよい井上君や、あいきょうもののノロちゃんも、はいっていました。
地下室には、坂口君のお店で、いちばん大きな金庫がすえてあります。そのなかに、セトモノのにせの黄金のトラをいれた箱が、おさめてあるのです。少年たちは、そのまわりに、いすにかけて、ゆだんなく、あたりに目をくばっていました。
午後四時すこしまえになると、坂口君のお店の支配人が、心配そうな顔で地下室へおりてきて、坂口君に声をかけました。
「ぼっちゃん、だいじょうぶですか。もうじき四時ですよ。」
「うん、だいじょうぶだ。でも、ゆだんはできないよ。このまえは、魔法博士の弟子の少年が、井上君にばけて、やってきたんだからね。」
すると、井上君がいいました。
「あのときは、オモチャの犬のなかにかくして、うちの人がだいていたので、ぼくのにせものに盗まれたが、こんどは金庫のなかだから、だいいち、暗号を知らなければ、とびらを開くことができないよ。こんどこそ、だいじょうぶだよ。」
支配人は、それでも、まだあんしんできないのか、
「わたしも、四時すぎるまで、ここで番をしますよ。」
そういって、金庫の前のいすに、腰をおろしました。支配人は金庫のなかにあるのが、セトモノのトラということを知らないのです。それは、少年探偵団員だけの秘密でした。
みんな、だまりこんで、ジロジロと、あたりを見まわしていました。忍術つかいのような博士のことですから、どこから、しのびこんでくるか、わからないからです。
地下室は、おおぜいの少年がいるのに、まるで、空部屋のように、シーンとしずまりかえっていました。いまにも、あやしいやつがはいってくるかと思うと、胸をドキドキさせているのですが、いつまでたっても、なにごともおこりません。
支配人は腕時計を見ながら、つぶやきました。
「四時五分まえです。……二分まえ……、一分まえ……、あっ、ちょうど四時です!」