探偵少年

13話 意外なトリック

1,748字 約3分 2018年8月12日 公開

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「あっ、四時だ!」

 坂口君と、井上君とが、じぶんの腕時計を見てさけびました。約束の四時が来たのです。しかし、ふしぎなことに、べつに、かわったこともおこりません。

「なあんだ、とうとう、魔法博士は、こなかったじゃないか。」

 井上君がいいますと、支配人が、にやにやっと笑いました。

「魔法博士は、ほんとうに、こなかったのでしょうかね?」

「だって、だれも来ていないじゃないか。」

 坂口君が、にやにやしている支配人の顔を見て、おこったようにいいました。

「来ていますよ。」

 支配人が、みょうなことをいうのです。

「えっ、来ているって、どこに?」

「ここに来ていますよ。」

 それをきくと、少年たちは、ギョッとして支配人の顔を見つめました。

 支配人は、やっぱり、ニヤリニヤリ笑っています。なんだかその顔が、いつもの支配人とはちがっているようで、うすきみのわるい気持になってくるのです。

「きみは……きみは、いったい、だれだっ?」

 坂口君が、おびえた声をたてました。

「ハハハ……、魔法博士が変装の名人だということを、わすれたのかね?」

 支配人の顔が、みるみる別の人にかわってくるように、思われました。

「あっ、それじゃ、きみは……。」

「そうだよ。わしは魔法博士だよ。どうだ、おどろいたか。」

 それをきくと、八人の少年たちは、サッと、金庫の前にかけよって、そこに立ちふさがりました。魔法博士にとびらを開かせないためです。

「ワハハハ……、いまさら、金庫をまもったって手おくれだよ。黄金のトラは、とっくに魔法の力で、わしが盗みだした。うそだとおもうなら、きみたち、金庫を開いて、あらためてみるがいい。」

「だって、金庫のとびらは、一度も、あかなかったよ。ぼくたちが、ちゃんと見ていた。とびらを開かないで、なかのものが取りだせるはずはないっ。」

「ハハハ……、そこが魔法だよ。ともかく、金庫を開いてみるがいい。」

 そういわれると、しらべてみないわけにはいきません。坂口君は暗号の文字ばんを、まわしました。

 坂口少年は、重い金庫のとびらを力まかせに開きました。そして、なかから小箱を取りだして、あらためてみますと、わたでくるんだセトモノのトラは、もとのままにはいっているではありませんか。

「なあんだ、ちゃんと、ここにあるじゃないか。」

「ウフフフ……、それが黄金のトラかね。見せてごらん。」

 支配人はそういったかとおもうと、いきなり、坂口君の手から、小箱をひったくって、にせもののトラを取りだし、パッと、床になげつけました。

 ガチャンと音がして、セトモノのトラは、こなごなに、われてしまいました。

「ワハハハ……、これでも黄金のトラかね。まっかなにせものじゃないか。」

 支配人は、カラカラと笑いました。

「そうだよ。それは、にせものだよ。ほんものは、ちゃんと、べつのところにかくしてあるのさ。ハハハ……、魔法博士のくせに、なんにも知らないんだね。」

 坂口少年が、勝ちほこっていいますと、支配人は、

「ウフフフ……、ところがね、じつをいうと、わしは魔法博士の弟子でね、ほんとうの博士が、とっくに黄金のトラを、盗みだしているのさ。

 うそだとおもうなら、セトモノ屋の今井君のうちへ、電話をかけて聞いてみるがいい。そこに、どんなことが、おこっているか。」

 ああ、魔法博士は、なにもかも知りぬいていたのです。少年たちをゆだんさせるために、博士の弟子が坂口君の店の支配人にばけて、こんなおしばいを、やって見せたのです。

「きのう電話をかけたのはね、魔法博士が、ここの金庫をねらっているとおもわせて、きみたちをみんな、ここへ、ひきつけておくためだったのさ。そして、そのすきに、ほんとうの魔法博士が、今井君の店から、黄金のトラを盗みだしてしまったのさ。ハハハハ……、きみたちが、いくら知恵をしぼっても、博士には、かないっこないのだよ。」

 支配人にばけた博士の弟子は、カラカラと笑いながら、ゆうゆうと階段をのぼって、地下室から出ていきました。

 八人の少年は、あまりのことに、そこに立ちすくんだまま、ぼんやりしていましたが、やがて、坂口少年が気をとりなおして、一階にかけあがり、今井君のお店へ電話をかけますと、やっぱり黄金のトラは、盗まれてしまったことがわかりました。

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