13話 意外なトリック
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「あっ、四時だ!」
坂口君と、井上君とが、じぶんの腕時計を見てさけびました。約束の四時が来たのです。しかし、ふしぎなことに、べつに、かわったこともおこりません。
「なあんだ、とうとう、魔法博士は、こなかったじゃないか。」
井上君がいいますと、支配人が、にやにやっと笑いました。
「魔法博士は、ほんとうに、こなかったのでしょうかね?」
「だって、だれも来ていないじゃないか。」
坂口君が、にやにやしている支配人の顔を見て、おこったようにいいました。
「来ていますよ。」
支配人が、みょうなことをいうのです。
「えっ、来ているって、どこに?」
「ここに来ていますよ。」
それをきくと、少年たちは、ギョッとして支配人の顔を見つめました。
支配人は、やっぱり、ニヤリニヤリ笑っています。なんだかその顔が、いつもの支配人とはちがっているようで、うすきみのわるい気持になってくるのです。
「きみは……きみは、いったい、だれだっ?」
坂口君が、おびえた声をたてました。
「ハハハ……、魔法博士が変装の名人だということを、わすれたのかね?」
支配人の顔が、みるみる別の人にかわってくるように、思われました。
「あっ、それじゃ、きみは……。」
「そうだよ。わしは魔法博士だよ。どうだ、おどろいたか。」
それをきくと、八人の少年たちは、サッと、金庫の前にかけよって、そこに立ちふさがりました。魔法博士にとびらを開かせないためです。
「ワハハハ……、いまさら、金庫をまもったって手おくれだよ。黄金のトラは、とっくに魔法の力で、わしが盗みだした。うそだとおもうなら、きみたち、金庫を開いて、あらためてみるがいい。」
「だって、金庫のとびらは、一度も、あかなかったよ。ぼくたちが、ちゃんと見ていた。とびらを開かないで、なかのものが取りだせるはずはないっ。」
「ハハハ……、そこが魔法だよ。ともかく、金庫を開いてみるがいい。」
そういわれると、しらべてみないわけにはいきません。坂口君は暗号の文字ばんを、まわしました。
坂口少年は、重い金庫のとびらを力まかせに開きました。そして、なかから小箱を取りだして、あらためてみますと、わたでくるんだセトモノのトラは、もとのままにはいっているではありませんか。
「なあんだ、ちゃんと、ここにあるじゃないか。」
「ウフフフ……、それが黄金のトラかね。見せてごらん。」
支配人はそういったかとおもうと、いきなり、坂口君の手から、小箱をひったくって、にせもののトラを取りだし、パッと、床になげつけました。
ガチャンと音がして、セトモノのトラは、こなごなに、われてしまいました。
「ワハハハ……、これでも黄金のトラかね。まっかなにせものじゃないか。」
支配人は、カラカラと笑いました。
「そうだよ。それは、にせものだよ。ほんものは、ちゃんと、べつのところにかくしてあるのさ。ハハハ……、魔法博士のくせに、なんにも知らないんだね。」
坂口少年が、勝ちほこっていいますと、支配人は、
「ウフフフ……、ところがね、じつをいうと、わしは魔法博士の弟子でね、ほんとうの博士が、とっくに黄金のトラを、盗みだしているのさ。
うそだとおもうなら、セトモノ屋の今井君のうちへ、電話をかけて聞いてみるがいい。そこに、どんなことが、おこっているか。」
ああ、魔法博士は、なにもかも知りぬいていたのです。少年たちをゆだんさせるために、博士の弟子が坂口君の店の支配人にばけて、こんなおしばいを、やって見せたのです。
「きのう電話をかけたのはね、魔法博士が、ここの金庫をねらっているとおもわせて、きみたちをみんな、ここへ、ひきつけておくためだったのさ。そして、そのすきに、ほんとうの魔法博士が、今井君の店から、黄金のトラを盗みだしてしまったのさ。ハハハハ……、きみたちが、いくら知恵をしぼっても、博士には、かないっこないのだよ。」
支配人にばけた博士の弟子は、カラカラと笑いながら、ゆうゆうと階段をのぼって、地下室から出ていきました。
八人の少年は、あまりのことに、そこに立ちすくんだまま、ぼんやりしていましたが、やがて、坂口少年が気をとりなおして、一階にかけあがり、今井君のお店へ電話をかけますと、やっぱり黄金のトラは、盗まれてしまったことがわかりました。