14話 追跡
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お話はかわって、やはりその日の、午後四時すこしまえ、セトモノ屋の今井君の店のむこうがわに、一台のから自動車がとまっていました。
そのなかには、小林団長と、今井君と、今井君のにいさんの大学生とが、かくれているのです。
魔法博士は、黄金のトラが、今井君の店に、かくしてあるのを知って、コッソリ、やってくるかもしれないからです。
今井君のにいさんは、自動車の運転がうまいので、少年探偵団のみかたになって、知りあいのガレージから自動車をかり出し、運転席にかくれて、そこに待ちぶせしているのです。小林、今井の二少年もうしろの席にかくれていました。みんな、窓よりひくく身をふせていたので、外からは、だれものっていないように見えるのです。
小林団長は、トラックについている、まるいバックミラーを、ガレージからかりてきて、自動車の窓のところへ出して、下から見ていました。このバックミラーは凸面鏡になっているので、ふつうの鏡よりも、ずっとひろいけしきがうつります。それを、むこうがわのセトモノ屋の店にむけて、黄金のトラの、かくしてあるたなを見はっているのです。
「あっ、へんなじいさんが来たよ。見てごらん。ね、なんだか、あやしいやつだね。」
鏡にそれがうつっていました。大きなめがねをかけ、白いあごひげを胸までたらし、茶色のコートをきて、黒いトルコ帽のようなものをかぶったじいさんが、つえにすがって、ヨチヨチと、セトモノ屋の店へはいっていくのです。
店には、たくさんの客がいました。じいさんは、そのなかにまじって、だんだん、黄金のトラのかくしてあるオモチャのたなのほうへ、近づいていきます。
そして、そのたなの前に立つと、キョロキョロと、あたりをぬすみ見て、スーッと、手をたなの上にのばしました。
「あっ、たいへんだっ。トラを……。」
今井君が、さけびました。
あやしい老人は、セトモノに見せかけてある黄金のトラをひっつかんで、サッと、ふところへいれてしまったのです。店員も、そばにいた客も、すこしも、それに気がつきません。じいさんは、そのまま、コソコソと店の外へ出て、むこうの電車通りのほうへ歩いていきます。
「あのじいさんのあとを、つけてください。」
小林君が、運転席に声をかけました。
セトモノ屋の店を、二十メートルもはなれると、つえにすがってヨボヨボしていたじいさんの足が、にわかに早くなりました。まるで青年のように、おおまたに歩くのです。
小林君たちの自動車は、あいてに気づかれぬように遠くはなれて、ノロノロと、そのあとをつけていきます。
「あっ、へんな自動車がいる。あれにのるのかもしれない。」
電車通りのかどに、青色の大きな自動車がとまっていました。じいさんはツカツカと、そのそばによると、いきなりドアを開いて、うしろの席にとびこみました。そして、その自動車は、おそろしい早さで走りだしたのです。
「にいさん、全速力だよ。あの青い自動車を見うしなわないように。」
今井君が、運転席によびかけました。
「よしっ、こころえたっ。にいさんのうでまえを、見ているがいい。」
映画のような自動車の追跡です。
青と黒の自動車は、二―三十メートルをへだてて、町から町へと、おそろしい早さで走りました。青色自動車は、さびしいほうへ、さびしいほうへと、まがっていきます。そして三十分ほどのちには、大きな川のそばに出ました。