18話 厳重なろうや
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こじき少年は、三人の男のために、とうとうとらえられて、西洋館の応接室に待ちかまえていた魔法博士の前にひきたてられました。博士はジロリと、少年をにらみつけて、
「ウフフ……、うまくばけたな。おい、きみは小林君だろう!」
と、たちまち、見やぶってしまいました。
「そうです。ぼく、しっぱいしました。あのイヌさえいなければ……。」
小林少年は、ざんねんそうに、くちびるをかみました。
「だが、きみは、いったい、どうして、このうちを、探しあてたんだね。」
「ぼくはずっと、おじさんのあとに、くっついていたのです。あのランチにしのびこみ、おじさんが潜水服をきると、ぼくも、あの箱のなかにあった、べつの潜水服をきて、海にとびこんだのです。それから……おじさんが、お台場にあがって、ゆだんをして、タバコをすっているひまに、ぼくはヘリコプターを見つけ、さきまわりをして、ズックをかぶって、そうじゅう席のうしろに、かくれていたんです。」
それをきくと、魔法博士は、びっくりしてしまいました。
「うーん、さすがに小林君だね。そこまで、しゅうねんぶかく、ついてくるとは知らなかった。
だがね、小林君、こうして、つかまってしまっては、やっぱりきみの負けだよ。しかし、きみも、それほどの苦労をしたんだから、これで勝負をきめてしまうのは、気のどくだね。どうだ、もうひとつ、腕だめしを、やってみるか。」
「腕だめしって、どんなことですか?」
「いまに、わかるよ。まあ、こっちへ来たまえ。」
博士は、小林君の手を引っぱって部屋を出ると、廊下をいくつもまがって、おくまった部屋のドアを開きました。
「ここはろうやだよ。わしのうちには、こういうろうやが、ちゃんとできているんだ。ここへは、なんにんも、おとなをとじこめたことがあるが、だれもぬけ出すことができなかった。それほど、厳重にできているんだ。
きみをこのろうやへ、五日間とじこめておく。その五日のあいだに、黄金のトラを盗みだすことができたら、きみの勝ちだ。それができなかったら、きみの負けだよ。どうだ、いくらきみでも、この難題は、とけないだろう。」
博士は、そういって、ニヤリと笑いました。
いかにも、難題です。その部屋は、壁も床も、レンガでかためてありました。
てんじょうは、シックイで、ぬりかためてあります。いっぽうの壁の高いところに、たった一つ小さな窓があるばかりで、その窓には、がんじょうな鉄ごうしがはめてあります。入口には、ふつうの倍もある厚いドアがついていて、とても、やぶることはできません。
「どうだ、やってみるかね。」
「ええ、ぼく、やってみます。五日のあいだに、黄金のトラを、盗みだせばいいのでしょう。」
「うん、そうだよ。だが、このろうやにとじこめられていて、あれが、盗みだせるかね。いくらきみがりこうでも、こればかりは、むずかしいだろうね。が、まあ、やってみるがいい。」
博士はそのまま、外へ出ていきました。
むろん、ドアをしめて、カチンとかぎをかけてしまったのです。
てんじょうのすみに、小さな電灯がついているので、まっ暗ではありません。いっぽうの壁ぎわに、小さなベッドがおいてあります。小林君は、博士がたちさると、いきなり、そのベッドの上によこになって、やがて、グッスリ寝こんでしまいました。なんという、だいたんな少年でしょう。
目がさめると、もう朝でした。小林君はベッドからおり、たったひとつの高い窓にとびつき、鉄のこうしにつかまって、外をながめました。窓のすぐ外に、高いコンクリートべいがそびえています。これでは、外を通る人に、あいずをするために、窓から、なにかをなげても、とても、へいをこさせることはできません。
お昼ごろになると、そのへいの外から、かすかに、大ぜいの子どもの声が聞こえてきました。外はひろっぱで、そこが、子どもたちの遊び場所になっているらしいのです。しかし、ここから声をかけたところで、とても、とどきませんし、また、そんなことをすれば、たちまち博士にさとられてしまいます。とても、ろうやをぬけ出すみこみはありません。
三度の食事は、ドアの下のほうについている小さな窓の戸をひらいて、そこから、さしいれるようになっていました。博士の部下が食事をはこび、ついでに、小林君のようすをうかがって、博士に報告するのです。三日めの夜、その部下が、博士の前にきて、こんなことを、報告しました。
「あの子どもは、ネズミと遊んでいますよ。
ろうやの床のレンガにわれめがあって、そこからネズミが、はいってくるのです。あの子どもは、そのネズミに、パンのたべのこしなんかをやって、手なずけたらしいですね。ネズミのほうでもなれてしまって、あの子どものひざまで、はいあがっているのですよ。」
「ふーん、よほど、たいくつしているらしいな。そのようすでは、牢やぶりなんて、思いもよらないね。」
博士は、安心したように、つぶやくのでした。一日、二日と日がたっていきましたが、ろうやのなかの小林君は、なんにもしないで、毎日ネズミと遊んでいるようすでした。
そして、とうとう、五日間がすぎさり、六日めの朝となりました。
魔法博士は、朝の食事をおわると、いそいでろうやにはいっていきました。
「おい、小林君、約束の五日間はすぎたよ。気のどくだが、きみの負けときまったね。」
すると、ベッドにこしかけていた小林君が、顔をあげて、にこにこしながらいうのです。
「え? ぼくの負けですって? とんでもない。ぼくが勝ったのですよ。」