海底大陸

41話 捜査やりなおし

1,171字 約2分 2013年5月17日 公開

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 空はぬぐったように晴れている。しかし波のうねりはそうとう大きい。

 船体を黄色にぬったルゾン号は、いまそのうねりをぬって、西へ西へ船脚(せんきゃく)をはやめていく。ルゾン号はエバン船長の指揮によって、ルアーブル港を出、ふたたび大西洋上に乗りだしたのである。

 船上には最高の珍客(ちんきゃく)が乗っていた。それは一体たれであったろうか。

 長良川博士だ。

 地球生物史の研究に、有数の権威者として知られる長良川博士だった。

 パリ大学に滞在中だった博士は、ルゾン号の報告にもとづき、大たんな説をたてて広く世界の人類に警告するところがあったことは前にのべた。

「――おそるべき生物が、大西洋の海底にすんでいるのだ。それをアトランタニアンまたは海底超人と呼ぼう。この海底超人こそは、わが人類よりもはるかに高等の生物だと推定される。豪華船クイーン・メリー号も、ついに、このアトランタニアンのため、海底ふかくひきずりこまれたのであろう。われわれは、はやくこの海底超人との意志交換をおこなわねばならぬ。さもなければ、わが人類対海底超人の無益(むえき)な争闘が起こって、ついには有史上(ゆうしじょう)最大の悲劇を生むであろうことを、あえて警告したい。――」

 と、博士は放送している。

 アトランタニアン、別名を海底超人という生物がすんでいるとの博士の推定は、すでに読者諸君がごぞんじのように、ちゃんとあたっているのである。しかも、これに反対する学者は少なくなかった。はなはだしい反対論者の中には、学問の領域をこえて感情的になり、長良川博士をののしる者さえ出てきた。

 英国においては、その方の最大権威者、サー・ロビンソン教授が、長良川博士の説を大体支持した。しかし英国の海空軍や、れいのスミス警部の属している警視庁では長良川博士の説をみとめず、いま地中海にさえ海賊潜水艦があばれているではないか、しからば大西洋にも海賊がいないと、たれが保証できるかと、あくまで海賊説をとっている。そして近い将来において、実力をもってその海賊を捕獲(ほかく)してみせると力んでいた。

 長良川博士は、そういう反対論には耳をかさず、フランス当局とふかい理解をとげたうえ、ついに海底超人国探検隊長となって、大西洋にのりだすことを承諾し、そして、ルゾン号の賓客(ひんきゃく)となったのである。

 博士は探検隊を組織するとともに、海底にくだるためのあらゆる用意をととのえた。幸いパリ大学の若き助教授ドン博士が一行の副団長として加わることになり、その用意の方はたいへん便宜(べんぎ)を得た。

 また失踪船(しっそうせん)メリー号のボーイだった三千夫少年も、この探検の一員として、いっしょにいくことをゆるされた。それで、少年はいま船上の大人気者となって、はりきっている。

 大西洋のゆうゆうたるうねりは、いまルゾン号をしずかになぶっている。十数時間後の大暴風雨などは知らんよというふうに、まるでおとなしかった。

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