70話 遊星植民説と海底進化説
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「ああ、この方が長良川博士ですか。わたしはドリー助教授です」
と、ひとりの、ひとのよさそうなはげ頭の老人が、長良川博士のところへやってきて、握手をもとめた。
「ああ、ドリー教授ですか」
「いや、皮肉をおっしゃってはいけませんなあ。わたしは、これでまだ助教授です。名物の万年助教授ですよ。まあそんなことはどうでもよろしい。わたしはかねがねあなたの研究論文にたいし、深甚なる敬意をはらっている者でしてな、海底超人の存在などは、けっきょく、あなたがいいあてたのですからね。よくおやりになりました。握手をしていただきましょう」
ドリー老助教授のさしだす大きな手を、長良川博士はうれしくにぎって振った。
むこうでは、シムトン会長が一同にむかい、さらに討論をつづけられたいと、あいさつをした。
「じゃあ、さっきの議論にかえり、海底超人の発生起源について、わしの論をすすめましょう」
と、安楽椅子から腰をあげたのは、生物学者として世界一と折紙をつけられているストックホルム大学のベント博士だ。
「――わしの考えるところでは、海底超人は、他の遊星から植民してきたところの生物であると思う。つまり海底超人は、ロケットのようなものに乗り、はるばる地球に近づいた。そしてロケットを大西洋の海底につけたのである。それは海底超人の生活力からいって、海底であることを必要条件としたからだ。そして海底超人はクイーン・メリー号をねらって、ここに人類との初交渉をおこなうことになったのである。だから海底超人の母国は、この宇宙に一つの遊星となって、いまも虎視眈々として、第二の植民をおこなおうとしているかもしれない」
「それはどうも不合理だ」
と白いひげの、やせたからだの老人が自席に立った。アイルランド大学のクイ教授だ。
「事務長クーパーの報告によると、海底超人の人口は、ちょっと見たところでも百万人ちかいものであったという。そういう大量の移民が、人類に知れずにそう簡単に出来るわけのものではない。そういうものが天涯からくれば、気象観測の上にも異常数値が報告されるはずである。すくなくとも、つなみは起こるであろう。しかるに、そんなことのあった話もきかぬところを見れば、ベント博士の論拠は成り立たぬ」
クイ老教授はベント博士の弱点をついた。
「では、クイ教授。あなたの論旨は、どういうのですかな」
とシムトン会長が逆に質問した。
「わしの説は、かようである」と、クイ教授は長くたれた白いひげをぐいとひっぱって、おもむろに口を開いた。
「海底超人は、決して他の遊星からきたものではない。あれはもともと海底にすんでいた軟体動物の進化したものである。人類はむかしサルと同じような祖先をもっていたが、それが今はわかれて人類とサルとははっきり区別がつくようになった。深海の軟体動物にしても、一方にはタコや水母のような相変らず下等なものもいるし、また一方では、人類と同様あるいはそれ以上のスピードで進化した海底超人もいるということになるのである。これがわしの論旨だ」
そういって、クイ教授は、反対説をあきらかにして、一座を見まわした。