5話 第八場 その一
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(祇園精舎の内庭である。正面に釈尊の居室があるが、扉はまだ開かれて居ない。左右は東西の僧堂になって居て、多少遠近法のついた窓々より灯がほのかに洩れて居る。内庭の石だたみの上に草の編物を敷き、弟子達が離れて二列に座して居る。各列の中央に細長い卓を置き、今、教団は、朝の食事の始まりである。朝が早いのであたりはまだ暗い。座中に三つ四つの燈を置き、窓の灯と共にかすかに舞台の配置を認めさす便りとする。香煙が薫じて居る。木槌で舞台を打つ合図の音が一つ。)
僧団上首の一人 ――うやまい奉る無上尊。うやまい奉る御教の数々。また道を共にする兄弟姉妹、かくてこの功徳無量無辺なるべし。
衆僧 ――(一度に声を合せ)清浄法身本体の生命、円満報身導きの生命、相に在す現実の生命、今われらに食を与えて道に進む行者の歩みを健かならしめらるるを感謝する。仰ぎ願わくばこの功徳を移してあまねく一切に及ぼし、咸共に、生命の自覚に入らしめられん事を。
(木槌の音三下四下)
上首の一人 ――粥に十の利あり、飯には三徳六味。食を享くるもの、いやしくもこの理を忘るる勿れ。
(食事の進むと共に空は明けかけて来る。小鳥の声など聞え出す。食事が終る頃、すっかり朝の景に変る。明るくなって見ると、二列の僧座の一方は黒衣の男僧であって、一方は白衣の尼僧であるのが分る。)