阿難と呪術師の娘

5話 第八場 その一

559字 約1分 2021年3月1日 公開

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(祇園精舎の内庭である。正面に釈尊の居室があるが、扉はまだ開かれて居ない。左右は東西の僧堂になって居て、多少遠近法のついた窓々より灯がほのかに洩(も)れて居る。内庭の石だたみの上に草の編物を敷き、弟子達が離れて二列に座して居る。各列の中央に細長い卓を置き、今、教団は、朝の食事の始まりである。朝が早いのであたりはまだ暗い。座中に三つ四つの燈を置き、窓の灯と共にかすかに舞台の配置を認めさす便りとする。香煙が薫じて居る。木槌(きづち)で舞台を打つ合図の音が一つ。)

僧団上首の一人 ――うやまい奉(たてまつ)る無上尊。うやまい奉る御教の数々。また道を共にする兄弟姉妹、かくてこの功徳無量無辺なるべし。

衆僧 ――(一度に声を合せ)清浄法身本体の生命、円満報身導きの生命、相(すがた)に在す現実の生命、今われらに食(じき)を与えて道に進む行者(ぎょうじゃ)の歩みを健かならしめらるるを感謝する。仰ぎ願わくばこの功徳(くどく)を移してあまねく一切に及ぼし、咸(みな)共(とも)に、生命の自覚に入らしめられん事を。

(木槌の音三下(げ)四下(げ))

上首の一人 ――粥(しゅく)に十の利あり、飯(はん)には三徳(てん)六味(み)。食(じき)を享(う)くるもの、いやしくもこの理を忘るる勿(なか)れ。

(食事の進むと共に空は明けかけて来る。小鳥の声など聞え出す。食事が終る頃、すっかり朝の景に変る。明るくなって見ると、二列の僧座の一方は黒衣の男僧であって、一方は白衣の尼僧であるのが分る。)

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