阿難と呪術師の娘

7話 第八場 その三

596字 約1分 2021年3月1日 公開

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(あたり少しく鳴り響き、目※して居る。娘は阿難に寄り添うように追(つ)いて来る、目連は釈尊の姿が眼に入るや、直(ただち)にその前に来て正しく立ち三拝する。阿難と娘は隔たった端に局竦(うずく)まり、首を地から上げ得ない。)

目連 ――師よ、阿難を連れて戻りました。

釈尊 ――御苦労であった。

目連 ――ここに居るのが呪術師の娘で御座います。わたくしの威神力をもってしても、どうしても阿難からこの娘を離す事が出来ないので御座います。

釈尊 ――いや、強いて今離すには及ばぬ。

(しばらく沈黙の時間が舞台を占める。その間に阿難はしばしば気を引立てて釈尊に何か訴え出でようとする様子であるが、自分が自分を阻(はば)めて打ち出し得ない。遂にしくしく泣き出す。阿難の泣くのを見て娘も悲しくなり袖を眼に当てる。)

釈尊 ――阿難よ。何うした。

(師に始めて言葉をかけられたので阿難はどっと泣き出す。嗚咽(おえつ)の間より情の嵩じた響音に呼ぶ。)

阿難 ――師よ。なつかしき師よ。

(その後はまた涙。娘さめざめと泣き出す。)

目連 ――可哀相では御座いますが、教団の掟で御座いますから、阿難を作法通りに行いましょうか。

釈尊 ――いや、それにも及ばぬ、お前も疲れたろうから早く部屋に引き取って休息するが宜い。阿難に就いてはわしに少し考えがあるから。

目連 ――有難う御座います。では失礼さして頂きます。

(目連は三拝した後、一寸阿難を顧み、憐みに堪えない表情を見せて、退場。)

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