18話 あたまは 石
読み方を変える
「おまえは いま けんか こうろんは せぬ、と いったな。」
「はい、もうしました。」
「では、ひとに つばや たんを はきかけられても、けんかを せぬか。」
「はい、おしぬぐって じっと だまり、おこらない しゅぎょうを したいと おもいます。」
「ほう、それでよい。それが おまえに、ほんとうに できるか?」
「はい、できます。できる ように しゅぎょう いたします。」
「そうだ。こちらが ただしいのに、つばや たんを はきかける ような やつは、いわば、ハエみたいなものじゃ。にんげんでは ない。そんな やつを あいてに けんか こうろん すれば、こちらが ばかに なる。」
「はい。」
「では、あいてが ぽかりと あたまを なぐって きたら、どうする。」
「がまん します。」
「いや、ただ がまんする だけでは いけない。そんな やつには、いくらでも なぐらせて やるがいい。わけの わからん やつがなぐった ときは、じぶんの あたまを あたまと おもうな。石だと おもえ。」
「石だと おもうのですか?」
一休さんは、にがい くすりを のんだような かおをしました。
「そうじゃ。わしの あたまは 石じゃ。おまえの 手は さぞ いたかったろうと あいてを ながめ、あいてを あわれんで やるのじゃ。」
「はい。」
こんどの さいごんじの おしょうさまは、こんなふうに てっていした こころを もっており、そのころ がくもんも おこないも、天下一だと いわれていた えらい ぼうさんでした。おしょうさまは、
「おまえは なかなか できている。どうじゃ、わしの ところで しんぼう できそうか。」
「いたします。」
「それでは 今日から そうじゅん と 名前を かえろ。」
一休さんは こうして、その日から さいごんじの 小ぞうに なりました。