21話 わかれを つげて
読み方を変える
まだ お母さまが じょうぶで、京都の はずれに すんでいました。さいごんじを でた 一休さんは、ひさしぶりに 母の もとを たずねていきました。
「お母さま、わたしは びわこの ほとりに しゅぎょうに いきます。しばらく おわかれに まいりました。」
「びわこの どこに いく つもりじゃ。」
「かそうさまの おでしに して いただきたいと おもいます。」
かそう という ぼうさんは むらさき野の 大とくじ という りっぱな おてらの じゅうしょく でしたが、そのころの だらくした ぼうさんばかり いる 京都を のがれ、びわこの かただの ほとりに、みすぼらしい いおりを たてて、そこで ふかい しゅぎょうを している、よにも まれな とくの たかい ぼうさんでした。
「それは けっこうです。でも おまえは どなたかの てがみを いただいて いますか?」
お母さまは たずねました。
「いいえ。」
「それでは むずかしいのじゃないか。かそうさまは めったに でしを とらぬと もうします。」
「でしに してくださらなければ、いおりの まえに ざぜんを くんで、しんでも うごかぬ かくごです。」
「そうですか。それほどの けっしんが あるなら、かそうさまも きっと でしに してくださるでしょう。」
それから 三日めの ことです。一休さんは、かそうさんの いおりを たずね、でしに してください、と たのみましたが、でしの 一人に、あっさりと ことわられ、かそうさんには あうことも できませんでした。
その夜の ことです。月あかりの したで ひとりの としよりの りょうしが、びわこで あみを かけていますと、なにか とても おもいものが あみに かかりました。
あみを ひきあげて みると、おもいのも そのはず、わかい ぼうさんの したいでした。
かそうおしょうに もんぜんばらいを くった 一休さんが、かなしみの あまり、びわこに みを なげたのでした。
まだ しんぞうの こどうが ありました。
しんせつな りょうしは 一休さんを いえに つれてきて かいほうして くれたので、一休さんは いきかえりました。
「どうして みなげなど したのです。」
じいさんと ばあさんが ききました。
一休さんが わけを はなしますと、じいさんと ばあさんは、
「それでは しばらく わたしの いえに とまっていて、ねっしんに たのみなさい。」と、いってくれました。
「ああ、わたしは かそうさまの ゆるしを うけるまでは、いおりの まえで しぬまで ざぜんを くむ つもりだったのに、こんな ことでは とても だめだ。」
一休さんは そう おもいかえして、それからも なんども なんども かそうさんの いおりを たずねましたが、そのたびに おいかえされました。