27話 かさ もんどう
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一休さんが かんとうの ほうへ むかって たびを つづけて いる ときの ことでした。
「下にい――下にい。」
と いう やかましい かけごえが きこえて、うしろから だいみょうぎょうれつが やってきました。
「ああ、うるさいものが やってきたな。」
一休さんは、まつなみきの そばの いしの うえに こしかけて、ひとやすみ しました。
すると、一休さんの まえを とおりすぎようと した とのさまが、かごの なかから、一休さんの ようすを みて けらいの ものに いいました。
「これこれ、あの おぼうさんは、この あついのに かさも もたずに おきのどくな ようす、たれか かさを 一つ おぼうさんに あたえよ。」
「はっ。」
かしこまった けらいの ひとりが、さっそく かさを もって 一休さんの ところに とんで きました。
「おぼうさん、とのさまの おおせで、かさを もって まいりました。この あついのに、かさなしでは さだめし おあついことで ございましょう。どうぞ この かさを かぶってください。」
すると、一休さんは さだめし よろこぶだろうと おもいの ほか、
「それは まことに かたじけないが、わしは うまれおちるとから、あおぞらを かさに かぶっているから、せっかくの おことばだが おかえし いたします。とのさまに よろしく もうして ください。」
と、手を ふって、えんりょもなく ことわって しまいました。
けらいの ものは あきれかえって しばらく ぼんやりと 一休さんの かおを みつめて いましたが、いらないと いうのですから、むりにとも いえないので、
「なんと、がんこな ぼうずだろう。」と、おもいながら、とのさまの ところに かえって、そのことを はなしました。
とのさまは しぶいかおをして けらいの いうことを きいて いましたが、やがて にこりとして、
「あおぞらが かさか。なるほど おもしろい ことを いう ぼうさんだな。そんなことを ずけずけ いう ぼうさんなら、きっと ただの ぼうさんでは あるまい。そそうの ないように いたせ。」
と、けらいを いましめて、そのまま いきすぎて しまいました。
ゆうがたに なって、とのさまが やどやに とまると、一休さんは いつ ぎょうれつを ぬいた ものか、もう ちゃんと その やどやに とまって いました。
「おやおや、あおぞらを かさに かぶって あるく、と いった あの ぼうさん、いつ わしの かごを とおりぬけたものか、もう ちゃんと とまって いるぞ。」
とのさまも びっくり しましたが、どうも あの ぼうさん おもしろそうだ、一つ よんで みようと、けらいにいいつけて、
「これこれ、あの ぼうさんを おまねきしてこい。」
と、いいつけました。
「はい、これは ありがたい。」
一休さんは すぐ しょうちして のこのこと とのさまの へやに はいろうと しました。すると、とつぜん へやの なかから とのさまが、
「おぼうさん、しばらく おまちを ねがいたい。」
と、こえを かけました。
「なんじゃ。」
「おぼうさん、たとえ おぼうさんとは いえ、ひとの ざしきに はいるのに、かさを かぶったままとは、ちと しつれいでござろう。かさを とって おはいりください。」
もちろん 一休さんは かさなど かぶって いません。しかし、さっき みちばたで、あおぞらを かさに かぶっている、と いったのですから まだ かさを かぶって いることに なります。
それを とのさまは もんどうにして いったのでした。
が、一休さんは そんな ことでは へこたれません。
「いや、いわれるまでもなく かさを とって はいりたいのは やまやまだが、なにぶんにも わしの かさは、あまり 大きすぎるので ぬいでも おくところが ない。しつれいとは おもうが このままに する。」
なるほど、あおぞらでは とっても おくところが ないだろう。とのさまは これを きくと、
「おぼうさんは 一休さんで ござろう。」
と、いいました。
「ははあ、ばけの かわが はげたか。」
一休さんは おもしろそうに わらって います。
とのさまは、一休さんに たくさんの ごちそうを だして、いろいろ はなしを ききましたが、そのなかに こんな はなしが ありました。
「一休さん、よのなかには ゆうれいと いうものが いるでしょうか。わたしは はなしには きいて いますが、まだ みたことが ありません。ゆうれいは ほんとに いるのでしょうか?」
と、とのさまが ききました。
「ははは……よく きかれる ことじゃが、わしは とちゅうに ぶらぶら、と こたえることに して いる。」
「とちゅうに ぶらぶら とは、どう いう ことですか。」
「それがな、ゆうれいと いう やつは、ひとの こころの もちかたで、でたり でなかったりする。だから、でると いえば でる。でないと いえば、でない。つまり とちゅうで ぶらぶら……」