一休さん

27話 かさ もんどう

2,087字 約4分 2021年6月25日 公開

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 一休(いっきゅう)さんが かんとうの ほうへ むかって たびを つづけて いる ときの ことでした。

(した)にい――(した)にい。」

 と いう やかましい かけごえが きこえて、うしろから だいみょうぎょうれつが やってきました。

「ああ、うるさいものが やってきたな。」

 一休(いっきゅう)さんは、まつなみきの そばの いしの うえに こしかけて、ひとやすみ しました。

 すると、一休(いっきゅう)さんの まえを とおりすぎようと した とのさまが、かごの なかから、一休(いっきゅう)さんの ようすを みて けらいの ものに いいました。

「これこれ、あの おぼうさんは、この あついのに かさも もたずに おきのどくな ようす、たれか かさを (ひと)つ おぼうさんに あたえよ。」

「はっ。」

 かしこまった けらいの ひとりが、さっそく かさを もって 一休(いっきゅう)さんの ところに とんで きました。

「おぼうさん、とのさまの おおせで、かさを もって まいりました。この あついのに、かさなしでは さだめし おあついことで ございましょう。どうぞ この かさを かぶってください。」

 すると、一休(いっきゅう)さんは さだめし よろこぶだろうと おもいの ほか、

「それは まことに かたじけないが、わしは うまれおちるとから、あおぞらを かさに かぶっているから、せっかくの おことばだが おかえし いたします。とのさまに よろしく もうして ください。」

 と、()を ふって、えんりょもなく ことわって しまいました。

 けらいの ものは あきれかえって しばらく ぼんやりと 一休(いっきゅう)さんの かおを みつめて いましたが、いらないと いうのですから、むりにとも いえないので、

「なんと、がんこな ぼうずだろう。」と、おもいながら、とのさまの ところに かえって、そのことを はなしました。

 とのさまは しぶいかおをして けらいの いうことを きいて いましたが、やがて にこりとして、

「あおぞらが かさか。なるほど おもしろい ことを いう ぼうさんだな。そんなことを ずけずけ いう ぼうさんなら、きっと ただの ぼうさんでは あるまい。そそうの ないように いたせ。」

 と、けらいを いましめて、そのまま いきすぎて しまいました。

 ゆうがたに なって、とのさまが やどやに とまると、一休(いっきゅう)さんは いつ ぎょうれつを ぬいた ものか、もう ちゃんと その やどやに とまって いました。

「おやおや、あおぞらを かさに かぶって あるく、と いった あの ぼうさん、いつ わしの かごを とおりぬけたものか、もう ちゃんと とまって いるぞ。」

 とのさまも びっくり しましたが、どうも あの ぼうさん おもしろそうだ、(ひと)つ よんで みようと、けらいにいいつけて、

「これこれ、あの ぼうさんを おまねきしてこい。」

 と、いいつけました。

「はい、これは ありがたい。」

 一休(いっきゅう)さんは すぐ しょうちして のこのこと とのさまの へやに はいろうと しました。すると、とつぜん へやの なかから とのさまが、

「おぼうさん、しばらく おまちを ねがいたい。」

 と、こえを かけました。

「なんじゃ。」

「おぼうさん、たとえ おぼうさんとは いえ、ひとの ざしきに はいるのに、かさを かぶったままとは、ちと しつれいでござろう。かさを とって おはいりください。」

 もちろん 一休(いっきゅう)さんは かさなど かぶって いません。しかし、さっき みちばたで、あおぞらを かさに かぶっている、と いったのですから まだ かさを かぶって いることに なります。

 それを とのさまは もんどうにして いったのでした。

 が、一休(いっきゅう)さんは そんな ことでは へこたれません。

「いや、いわれるまでもなく かさを とって はいりたいのは やまやまだが、なにぶんにも わしの かさは、あまり (おお)きすぎるので ぬいでも おくところが ない。しつれいとは おもうが このままに する。」

 なるほど、あおぞらでは とっても おくところが ないだろう。とのさまは これを きくと、

「おぼうさんは 一休(いっきゅう)さんで ござろう。」

 と、いいました。

「ははあ、ばけの かわが はげたか。」

 一休(いっきゅう)さんは おもしろそうに わらって います。

 とのさまは、一休(いっきゅう)さんに たくさんの ごちそうを だして、いろいろ はなしを ききましたが、そのなかに こんな はなしが ありました。

一休(いっきゅう)さん、よのなかには ゆうれいと いうものが いるでしょうか。わたしは はなしには きいて いますが、まだ みたことが ありません。ゆうれいは ほんとに いるのでしょうか?」

 と、とのさまが ききました。

「ははは……よく きかれる ことじゃが、わしは とちゅうに ぶらぶら、と こたえることに して いる。」

「とちゅうに ぶらぶら とは、どう いう ことですか。」

「それがな、ゆうれいと いう やつは、ひとの こころの もちかたで、でたり でなかったりする。だから、でると いえば でる。でないと いえば、でない。つまり とちゅうで ぶらぶら……」

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