4話 赤外線男(4)
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帆村探偵を交ぜた係官の一行が、深山理学士の研究室を訪ねたのは、新しい赤外線テレヴィジョン装置が出来上ったという其の日の夕刻のことだった。折角作った一台は、無惨にも赤外線男の破壊するところとなり、学士も助手の白丘ダリアも大いに失望したが、その筋の希望もあって、二人は更に設計をやり直し、新しい装置を昼夜兼行で組立てたのだった。白丘ダリアは、この事件以来というものは、住居にしている伯父黒河内子爵のところへ帰ってゆくことをやめ、深山研究室の中にベッドを一つ置き、学士と共に寝起きすることとなった。碌に睡眠時間もとらないで、この組立に急いだ結果、四日という短い日数のうちに、新しい第二装置ができあがった。しかし学士はあの事件以来、何とはなく大変疲れているようであった。その一方、白丘ダリアは益々健康に輝き頸から胸へかけての曲線といい、腰から下の飛び出したような肉塊といい、まるで張りきった太い腸詰を連想させる程だった。従って第二装置の素晴らしい進行速度も、ダリアの精力に負うところが多かった。
研究室の扉をコツコツと叩くと、直ぐに応えがあった。入口が奥へ開かれると、そこへ顔を出したのは、頭に一杯繃帯をして、大きな黒眼鏡をかけた若い女だった。先登に立っていた課長は、
(これは部屋が違ったかナ)
と思った位だった。
「さあ、皆さんどうぞ」
そういう声は、紛れもなく白丘ダリアに違いなかった。どうしてこんな繃帯をしているのだろう。それに黒眼鏡なんか掛けて……と不思議に思った。
一行中の新顔である帆村探偵が、深山理学士と白丘ダリアとに、先ず紹介された。
「いや、ダリアさんですか、始めまして」と帆村は慇懃に挨拶をして「その繃帯はどうしたんです」と尋ねた。
課長はこの場の様子を見て、いつもながら帆村の手廻しのよいのに呆れ顔だった。
「これですか」少女はちょっと暗い顔をしたが「すこしばかり怪我をしたんですの。繃帯をしていますので大変にみえますけれど、それほどでもないのです」
「どうして怪我をしたんですか」
「いいえ、アノ一昨晩、この部屋で寝ていますと、水素乾燥用の硫酸の壜が破裂をしたのです。その拍子に、棚が落ちて、上に載っていたものが墜落して来て、頭を切ったのです」
「そりゃ大変でしたネ。眼にも飛んで来たわけですか」
「何しろ疲れていたもので、直ぐ起きようと思っても起き上れないのです。先生は直ぐ駈けつけて下さいましたけれど、あたくしが、愚図愚図しているうちに、頭髪についていた硫酸らしいものが眼の中へ流れこんだのです。直ぐ洗ったんですが、大変痛んで、左の眼は殆んど見えなくなり、右の眼も大変弱っています」
ダリアは黒眼鏡を外して見たが、左眼はまるで茹でたように白くなり、そうでないところは真赤に充血していた。右の眼はやや充血している位でまず無事な方であった。
「全く危いところでしたよ。連日の努力で、もう身体も頭脳も疲れ切っているのです。神経ばかり、高ぶりましてネ」と理学士も側へよって来て述懐した。彼の眼の色も、そういえば尋常でないように見えた。
「もすこしで、どうかなるところでしたわ。そうだったら、今日は実験を御覧に入れられませんでしたでしょう」
ダリアは独り言のように云った。
一同は此の室に何だか唯ならぬ妖気が漂っているような気がした。
「じゃ、いよいよ働かせて見ます」と深山学士は立ち上った。「白丘さん。カーテンを閉めてすっかり暗室にして呉れ給え」
「はい、畏りました」
ダリアは割合に元気に窓のところに歩みよっては、パタンパタンと蝶番式にとりつけてある雨戸を合わせてピチンと止め金を下ろし、その内側に二重の黒カーテンを引いていった。窓という窓がすっかり閉ってしまうと、室内には桃色のネオン灯が一つ、薄ボンヤリと器械の上を照らしていた。隅によっていた幾野捜査課長、雁金検事、中河予審判事、帆村探偵、それから本庁の警部一名と刑事が二名、もう一人、事件の最初に出て来た警察署の熊岡警官と、これだけの人間が灯の下へゾロゾロと集ってきた。
「これは君、暗いネ」課長はすこし暗さを気にしていた。
「何だか、頭の上から圧えられるようだ」そういったのは白髪の多い中河予審判事だった。
「このネオン灯も消します。そうしないと巧く見えないのです」深山が云った。「しかしスウィッチは、ここにありますから、仰有って下されば、いつでも点けます」
「待ってくれ、待ってくれ」と雁金検事が悲鳴に近い声をあげた。「どこに誰がいるやら判らないじゃないか。よオし、諸君はとりあえずこっちに立っていて呉れ給え。僕たちは、この椅子に腰をかけていることにしよう」
幹部だけが、スクリーンを包囲して、椅子に席をとった。
「いいですか」
「いいよ」
パッとネオン灯は消えた。すると一尺四角ばかりのスクリーンの上に、朧気な映像があらわれた。
「馬鹿に暗いネ」と課長が云った。
「ピントが外れているのです。増幅器もまだうまいところへ調整がいっていません。直ぐ直ってきますよ」
なるほど映像はすこし明瞭度を加えた。テニスコートの棒くいや審判台らしいものが見える。そこへ人影らしいものが。
「人間が通っているぞ」課長が叫んだ。「早く肉眼で運動場を見せ給え」
「これは、こっちのレンズからお覗き遊ばして……」捜査課長の耳許でダリアの声がした。
「呀ッ」と課長は慌てたが「いやなるほど、よく見えます。――なあーンだ、例の用務員が本当に通ってやがる」
まず赤外線男ではなかったので安心した。
「この辺のところですから、さあ誰方も変りあってスクリーンを覗いて下さい」理学士が器械から離れながら云った。
「さあ順番に見ようじゃないか」検事が後の方から声をあげた。
ゴトリゴトリと靴音がして、スクリーンの前に観察者が入れ代っているようだった。
「どうも赤外線写真というものは、色の具合が、死人の世界を覗いているようだな」判事さんが呟きながら視ている。
そのとき真暗だった室内へ、急に煌々たる白光がさし込んだ。
「呀ッ!」
「どッどうしたんだ」理学士が叫んだ。
一つの窓のカーテンが、サーッとまくられたのだった。皆の眼は、この眩しい光に会ってクラクラとした。
「いいえ、何でもないのです。失礼しました」と、窓のところでダリアの声がした。
「困るじゃないか」深山は云った。
「アノちょっと何だか、あたしの身体になんだか触りましたのよ。吃驚して、窓をあけたんですの」
「ああ、もう出たかッ――」
「赤外線男!」
「窓を皆、明けろッ!」
そのとき白丘ダリアは朗らかな声で云った。
「いいえ、大丈夫ですわ。カーテンを明けてみましたら、帆村さんのお臀でしたわ。ホホホ」
「なあーンだ」
一座はホッと溜息をついた。
「じゃ早くカーテンを下ろしなさい」
「済みません」
カーテンはパタリと下りた。元の暗闇が帰って来たけれど、皆の網膜には白光が深く浸みこんでいて、闇黒がぼんやり薄明るく感じた。スクリーンの前では雁金検事が、しきりに眼をしばたたいていた。
ウームというような低い呻り声が聞えたと思った。ドタリ……と、大きな林檎の箱を仆したような音が、それに続いて起った。
素破、異変だ!
「どッどうした」
「まッ窓だ窓だ窓だッ」
「ランプ、ランプ、ランプ!」
さーッと、窓から白光が流れこんだ。ネオン灯もいつの間にか点いた。
「キャーッ」と喚いてカーテンに縋りついたのは、窓のところへ駈けよったばかりの白丘ダリアだった。床の上には、幾野捜査課長が土のような顔色をし、両眼を剥きだし、口を大きく開けて仆れていた。
もう赤外線テレヴィジョンも何もなかった。窓という窓は明け放された。室内の一同の顔には生色がなかった。
「赤外線男!」
「ああ、あいつの仕業だ」
いまにも自分の身体に、赤外線男の猿臂がムズと触れはしないかと思うと、恐ろしい戦慄が電気のように全身を走った。眼に見えない敵! そいつをどう防げばいいのだ。どうして其の魔手から遁れればいいのだ。
そのとき帆村探偵は、一人進み出て、捜査課長を抱え起した。課長の頭は、ガックリ前へ垂れた。
「呀ッ、こりゃ非道い!」
帆村は呟いた。幾野課長の頸の真うしろに一本の銀鍼がプスリと刺さっていた。
一同は吾れにかえると、赤外線男のことを鳥渡忘れて、課長の死骸の周囲に駈けあつまった。
「延髄を一と突きにやられている……」
「太い鍼だッ」
「指紋を消さないように、手帛でも被せて抜けッ」
「これは抜けますまい」と帆村が云った。
なるほど、力の強い刑事が引張っても抜けなかった。鍼に筋肉が搦みついてしまったものらしい。
「一体これは、どうして検べようか」判事が当惑の色をアリアリと現わして云った。
「どうも、相手が悪い」と検事が呟いた。
「赤外線男はそれとして置いて、普通の事件どおり、この部屋の中にいる者は、すっかり取調べることにして下さい」と帆村が云った。
そこで係官が代りあって係官自身と、帆村、深山理学士、白丘ダリアとを調べてみたが、別に怪しい点は何一つ発見されなかった。
結局、赤外線男の仕業ということが裏書きされたようなものだった。流石の帆村探偵も手も足も出せなかった。
6
捜査課長の殺害事件は、俄然日本全国の新聞紙を賑わした。それと共に、赤外線男の噂が一段と高まった。警視庁の無能が、新聞の論説となり、投書の機関銃となり、総監をはじめ各部長の面目はまるつぶれだった。
四谷に赤外線男が出た。三河島にも赤外線男が現われたと、時間と場所とを弁えぬ出現ぶりだった。尤もそれは皆が皆、本当の赤外線男とは思えず、一寸話を聞いただけで偽赤外線男だと看破出来るようなものもあった。
帆村探偵は、直接に攻撃されはしなかったけれど、内心大いに安からぬものがあった。彼は書斎のソファに身を埋めると細巻のハバナに火を点けて、ウットリと紫の煙をはいた。彼は元々赤外線男などという不思議な生物があるとは信じていなかった。しかしそれには別に根拠があるわけではなかったのだ。捜査課長の故幾野氏の惨死事件を考えてみるのに、あれは赤外線男なら勿論出来ることであるが、それと同時にあの部屋にいた人間にも出来ることではないかと思いかえしてみた。
雁金検事、中河判事――この二人は、まず犯人ではないであろう。彼等の本庁に於ける歴史も功績も古く大きいものだ。
警部、刑事も疑えば疑えないこともないが、日頃知っている仲だから先ず大丈夫。
熊岡警官はどうだ。これは始めて会った人ではあるが、Y署では模範警官といわれているから大丈夫だろう。但しいろいろと探偵眼のあるところが、平警官として多少気に入らないこともないが、一々疑ってはきりがない。
残るは深山理学士だ。これは確かに怪しくてもいい人物だ。しかし彼は赤外線男を見たという。赤外線男が二人もあるなら格別、一人なら彼の嫌疑は薄い。ことに彼は赤外線男に襲撃され、変圧器の上へ抛り上げられていた被害者ででもある。感心しない。
然らば白丘ダリア嬢はどうだ。「赤外線男」というからには、ダリア嬢では性別が違っている。男が女装しているものとはあの溌溂たる肉体美から云って信じられない。殊に課長がやられた日には、眼を悪くしていた。あのように視力の弱っているのに、延髄を刺すというような精密正確を要することが出来るであろうか。
いや凡そ、あの部屋にいた連中は皆、闇黒の中に沈澱していたのだ。誰も視力を奪われていた。暗闇で延髄を刺すということは、誰にも出来ない筈だ。
残る嫌疑者は自分であるが、これとても同じことが云える。
然らば、誰が課長を殺したか?
ああ、赤外線男! 貴様はやっぱり存在するのか。貴様でなければ、あの殺人は出来ないことにはなるが、貴様は一体何者だッ。
帆村は呻りながらも、まだ何か忘れているものがありはしないかと、痛む頭脳をふり絞った。
有るには有る。あの延髄を刺した鍼だ。調べてみると指紋はあった。しかし細い鍼の上にのった幅のない指紋なんて何になるのだ。
それから、深山理学士の室で発見された大きい靴跡だ。あれが赤外線男のものとして、背丈を出すと五尺七寸位。これはいい。
次に事務室で盗まれた千二百円だ。赤外線男に金が要るとは可笑しい。しかし靴を履いていたり、黒い洋服のようなものを着ているというからには、矢張り金が要るのかしら。しかし、その金をどうして使うのだ。彼自身が握っていたのでは、金は他人の眼に見えないだろうし、第一洋服店の前に立って、洋服を注文したところで、背丈肉付もわからなければ、店の方でも声ばかりするのでは驚いて、不思議な噂話がパッと拡がらねばならぬ。それも聞えてこないというのは、若しや赤外線男に手下があるのではあるまいか。
世間では、新宿のホームから飛びこんで轢死した婦人の身許もわからないし、地下に葬った筈の死骸が紛失した不思議さを、今も尚覚えていて、あれも赤外線男の仕業だろうと云っているようだ。死骸を奪ったのが赤外線男だとすると、それは何のためだ。外国の小説には、火星人が地球の人間を捕虜にし、その皮を剥いで自分がスッポリ被り、人間らしく仮装して吾れ等の社会に紛れこんでくるのがある。しかしあの婦人の顔面は滅茶滅茶だった筈だ。婦人に化けたとしても、あの顔をどうするのだ。顔をかくしている婦人なんて印度や土耳古なら知らぬこと、この日の本にありはしない。婦人の死骸の行方が判らない限りこの問題は解決がつかない。
それから熊岡警官が轢死婦人のハンドバッグから探し出したフィルムの焼け屑だ。あれは一体何だ。あれが判明すると、婦人の死因は勿論、身許まで解ることだろう。
赤外線男に関係あるかどうかは二段として、この婦人の問題を解いて置くことは、あまり困難でもない。その上に、隅田梅子という婦人と轢死婦人とが同じ衣類所持品をもっていたという暗合、それから黒河内子爵夫人が、行方不明で、今も尚生死が知れぬが、あの少し前に、乱歩氏の「陰獣」のことを言い出したという事――よし、明日から、この方面を徹底的に調べてみよう。
帆村は、こう考えると、静かに椅子から立ち上って卓子の灰皿へ長くなった白い葉巻の灰をポトンと落した。
そのとき卓上電話がジリジリと鳴った。帆村はキラリと眼を輝かすと、電話機を取上げた。
「帆村君を願います」性急な声が聞えた。
「帆村は私ですが、貴方は?」
「ああ、帆村君。私です。捜査課長の大江山警部ですよ」それは故幾野課長の後を襲った新進の警部だった。
「大江山さんですか。また何かありましたか」
「ええ、あったどころじゃないです。唯今総監閣下が殺害されました」
「ナニ総監閣下が……? 本当ですか」
「困ったことですが、本当です」
「一体どうしたのです。どこでやられたのです」
「今日は御案内したとおり、深山理学士の赤外線テレヴィジョン装置を、本庁の一室にとりつけたのです。それは警戒を充分にして、この装置で丹念に赤外線男を探しあてようというのです。深山さんに白丘さんと、お二人に来て貰って取付けました。実験は午後三時から開始するつもりで、貴方にもお出で願うよう申上げて置きましたが、先刻総監閣下が急に見たいと仰有るので到頭ご覧に入れちまったのです」
「そりゃ拙かったですネ」と帆村は腹立たしそうに云った。
「私ども始めはお止めしたのです。しかし閣下は他出される約束があって、その日の三時にはご覧になれないのです。それで強いてというお話ですし、一方例の用意もありまして大丈夫だと思ったのです」
例の用意というのは、深山理学士と白丘ダリア嬢には秘密で、この室内の一隅に小さい赤外線発生灯を点じ、隠し穴を通じて隣室からこの室内を活動写真に撮る。つまり肉眼で見えぬ光線を室内に送って置いて、室内の人々の動静を赤外線映画に収めてしまう。斯うすれば、その中で怪し気な行動をする者がフィルムの上に映った筈だから、後で現像すればそれと判る――こんな仕掛けを予め作って置いたのである。しかし総監閣下が犠牲になられたのでは、何にもならない。本庁の連中の愚鈍さに、帆村は呆れる外なかった。
「で、閣下がお入りになってから、フィルムを廻したのですネ」
「そうです。うまく撮ったつもりです。――だが閣下は殺害されました。兇器は鍼で、同じように延髄を刺しつらぬいています」
「現像は……」
「今やっています。直ぐこれからおいで願いたいのです」
「ええ、参ります」
帆村は憂鬱な返辞をした。
駆けつけてみると、本庁は上を下への大騒ぎだった。殺られる人に事欠いて、総監閣下が苟めの機会から非業の死を遂げたというのだから、これは大変なことである。
「どうです。フィルムの現像は出来ましたか」帆村は課長に会うと、真先に訊いた。
「出来たのですが……」
「どうしたんです?」
「駄目でした。赤外線灯の前に、どういうものかドヤドヤと人が立って、肝心のところは真暗で、何にも写ってやしません」
課長は、面目なげに下俯いた。
「深山氏とダリア嬢は、調べましたか」
「今度こそはというのでよく調べました。身体検査も百二十パーセントにやりました。ダリア嬢も気の毒でしたが、婦人警官に渡して少しひどいところまで、残る隈なく調べ、繃帯もすっかり取外させるし、眼鏡もとられて眼瞼もひっくりかえしてみるというところまでやったんですが、何の得るところもありません」
「ダリア嬢の眼はどうです」
「ますますひどいようですよ。左眼は永久に失明するかも知れません。右眼も充血がひどくなっているそうです」
「ダリア嬢は眼のわるい点でいいとして、深山氏の行動に不審はなかったんですか」
「ところが深山氏は閣下にいろいろと詳しく説明していた最中なのです。深山氏が喋っているのに、閣下はウーンといって仆れられたのです。深山氏を疑うとなれば、喋っていながら手を動かして鍼を突き立てるということになりますが、これは実行の出来ないことですよ」
「すると二人の嫌疑は晴れたのですか」
「まあ、そうなりますネ。二人もこれに懲りて、今後はどんなことがあっても、あの装置を働かす暗室内へは行かないと云っていますよ」
「では犯人は一体誰なんです」
「赤外線男――でしょうナ」
「課長さんは、赤外線男だといって満足していられるんですか」
「今となっては満足しています。昨日までは稍信じなかったですが、今日という今日は、赤外線男の仕業と信じました。この上は、私どもの手で、あの装置を二十四時間ぶっ通しに運転して、赤外線男を発見せずには置きません」
「しかし、レンズは室内を睨ませたがいいですよ。あの室内に赤外線男がウロウロしているのではネ」
帆村は、課長の勇猛心に顔負けがして、ちょっと皮肉を飛ばした。
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