13話 山へ 一
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私は丸善へ行くと、たいていの場合、先ず第一に伝記のところを見、次にエッセイの部を眺め、新刊書の棚の両側に目を走らせ、それが済むとお隣のスポーツの部を瞥見する。先日、といっても二月前だが、この順序で最後のスポーツへ到達したら、時しも頃は若人の心が高きに向う晩春なので、山の本が沢山来ていた。私はその中の一冊、To the Mountains つまり『山へ』というのに特に目をつけ、取り上げて頁をパラパラ拾い読みすると、マルセーユのライセンスド・クオータアのことや、貨物船のことばかりが目についた。妙な本だと思って買って帰ったが、事実これは妙な本で、而も面白い本である。