15話 山へ 三
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『山へ』の山はツーグスピッツェである。著者はジェレミーと呼ぶ友人と一緒にこの山に登るのであるが、途中いたる所で何かにひっかかっては、以前の経験を思い出し、横路へ入り込んで了う。トリストラム・シャンデー、ちょっとあんな調子だが、もちろんあんなに七面倒ではない。以前の経験というのが、いずれも旅のそれで、しかもカフェーやビヤ・ガルデンの話が多い。山の本としてはこれだけでもいい加減変っていて、いわゆる「厳格な、教義と実行とを持つ」登山者並に山岳文学者は、寛大な微苦笑を以て、「他愛ない」という前に、先ず憤慨しそうであるが、読物としては確かに面白く、殊に著者が旅行しながらこの本を書いていることが意識的に明瞭に出してある点、甚だ愉快である。