80話 おばけの正体 第八〇項 哲学堂の青火
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余が二、三年前、野外の一軒家たる和田山哲学堂に宿し、夜十二時ごろまで書物の取り調べをなし、まさに寝に就かんとして出でて庭前に立てば、一丁あまりも隔たりたる梅林の間に、青色の火がトロトロと燃え上がり、また消え、明滅数回なるを認めた。そのときは暗夜にして、しかも星影も見えぬ曇天で、またその辺りは墓場の跡でもなければ、燐光の出るはずもない。あるいは乞食がそこにやどって火をたくのとも考えられず、とにかく実際を見届けるにしかずと思い、ソロソロ歩いて梅林の中へ行ってみたところが、すぐに正体が知れた。その正体は亡霊の火にあらずして、昼の間、番人が枯れ草を刈り取り、梅林の中に穴を掘り、ここにその草を入れて焼き、上より土を載せておいたのが、夜半まで火が全く滅せずして、土の間より少しずつ燃え上がっていたのである。そのとき、世間の幽霊火も大抵このようのものであろうかと思った。