おばけの正体

87話 おばけの正体 第八七項 幽霊の写真

497字 約1分 2016年6月5日 公開

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 幽霊が写真に写ったという話は全国諸方にて聞いている。その最も古きは西南戦争の翌年、熊本鎮台の一兵卒が写真をとったときに、朦朧(もうろう)としたる他人の姿が一緒に写っていたことがある。そののち二、三カ所で幽霊の写真を見たが、ここに先年、仙台の『東北新聞』の雑報に出でたる一項を抜載すれば、

 青森県上北郡三沢村、石場寅次郎の母は、同県八戸(はちのへ)町石場亀吉の母とともに、写真師を招き相並びて撮影せしに、不思議なるかな、二人の姿の間にありありと現れたる姿あり。なにものにやと熟視すれば、これぞ数年前、コレラにて没せし寅次郎が母の夫なるにぞ。一同、写真を眺めてひたすら怪しみおる由。

と見えていた。余はかつて、そのことを写真師にたずねてみたるに、写真師が申すには、「一度写したるガラスをよくみがかずして再び写しとるときは、先影の朦朧として形をとどむることがある。これ、もとより偶然の出来事なれども、あり得べきことなれば、決して不思議とするに足らぬ」と申しておる。その後また、ほかの写真師にたずねたれば、「写真師の技術にて、かかるボンヤリしたる影をたやすくこしらえることができるから、決して奇怪とするに足らぬ」と答えておる。

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