7話 〈上〉 七 夏目先生の旧廬
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先生が二度目に仮寓せられた家といふのを諸方詮索して二番町に得た。それだといふ家は仮名で『なかゐ』と標札打ち当地のおきや即ち東京の芸妓屋になつてる。既に大部分改築されたものださうだが、それにしても昔先生の居た位置の二階に鏡台が陳べられ、肌脱ぎになつた平べたい顔の芸妓が派手な鏡台掛けをはねるや鬢に毛すじ棒を突込み、ためつすがめつ直してゐる。坊つちやんがここのそばやへ入り翌日生徒に天ぷら先生と黒板に書かれたといふ着想を得られたらしき、更科といふ当地で相当のそばやも直ぐ近所にある。