蟹工船

3話 三(1)

6,891字 約14分 2004年12月1日 公開

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 霧雨が何日も上らない。それでボカされたカムサツカの沿線が、するすると八ツ目鰻(うなぎ)のように延びて見えた。

 沖合四浬(かいり)のところに、博光丸が錨(いかり)を下ろした。――三浬までロシアの領海なので、それ以内に入ることは出来ない「ことになっていた」。

 網さばきが終って、何時(いつ)からでも蟹漁が出来るように準備が出来た。カムサツカの夜明けは二時頃なので、漁夫達はすっかり身支度をし、股(また)までのゴム靴をはいたまま、折箱の中に入って、ゴロ寝をした。

 周旋屋にだまされて、連れてこられた東京の学生上りは、こんな筈(はず)がなかった、とブツブツ云っていた。

「独(ひと)り寝だなんて、ウマイ事云いやがって!」

「ちげえねえ、独り寝さ。ゴロ寝だもの」

 学生は十七、八人来ていた。六十円を前借りすることに決めて、汽車賃、宿料、毛布、布団(ふとん)、それに周旋料を取られて、結局船へ来たときには、一人七、八円の借金(!)になっていた。それが始めて分ったとき、貨幣(かね)だと思って握っていたのが、枯葉であったより、もっと彼等はキョトンとしてしまった。――始め、彼等は青鬼、赤鬼の中に取り巻かれた亡者のように、漁夫の中に一かたまりに固(かたま)っていた。

 函館(はこだて)を出帆してから、四日目ころから、毎日のボロボロな飯と何時も同じ汁のために、学生は皆身体の工合を悪くしてしまった。寝床に入ってから、膝(ひざ)を立てて、お互に脛(すね)を指で押していた。何度も繰りかえして、その度(たび)に引っこんだとか、引っこまないとか、彼等の気持は瞬間明るくなったり、暗くなったりした。脛をなでてみると、弱い電気に触れるように、しびれるのが二、三人出てきた。棚(たな)の端から両足をブラ下げて、膝頭を手刀で打って、足が飛び上るか、どうかを試した。それに悪いことには、「通じ」が四日も五日も無くなっていた。学生の一人が医者に通じ薬を貰いに行った。帰ってきた学生は、興奮から青い顔をしていた。――「そんなぜいたくな薬なんて無いとよ」

「んだべ。船医なんてんなものよ」側(そば)で聞いていた古い漁夫が云った。

「何処(どこ)の医者も同じだよ。俺のいたところの会社の医者もんだった」坑山の漁夫だった。

 皆がゴロゴロ横になっていたとき、監督が入ってきた。

「皆、寝たか――一寸(ちょっと)聞け。秩父丸が沈没したっていう無電が入ったんだ。生死の詳しいことは分らないそうだ」唇をゆがめて、唾(つば)をチェッとはいた。癖だった。

 学生は給仕からきいたことが、すぐ頭にきた。自分が現に手をかけて殺した四、五百人の労働者の生命のことを、平気な顔で云う、海にタタキ込んでやっても足りない奴だ、と思った。皆はムクムクと頭をあげた。急に、ザワザワお互に話し出した。浅川はそれだけ云うと、左肩だけを前の方に振って、出て行った。

 行衛(ゆくえ)の分らなかった雑夫が、二日前にボイラーの側から出てきたところをつかまった。二日隠れていたけれども、腹が減って、腹が減って、どうにも出来ず、出て来たのだった。捕(つか)んだのは中年過ぎの漁夫だった。若い漁夫がその漁夫をなぐりつけると云って、怒った。

「うるさい奴だ、煙草のみでもないのに、煙草の味が分るか」バットを二個手に入れた漁夫はうまそうに飲んでいた。

 雑夫は監督にシャツ一枚にされると、二つあるうちの一つの方の便所に押し込まれて、表から錠を下ろされた。初め、皆は便所へ行くのを嫌った。隣りで泣きわめく声が、とても聞いていられなかった。二日目にはその声がかすれて、ヒエ、ヒエしていた。そして、そのわめきが間を置くようになった。その日の終り頃に、仕事を終った漁夫が、気掛りで直(す)ぐ便所のところへ行ったが、もうドアーを内側から叩(たた)きつける音もしていなかった。こっちから合図をしても、それが返って来なかった。――その遅く、睾隠(きんかく)しに片手をもたれかけて、便所紙の箱に頭を入れ、うつぶせに倒れていた宮口が、出されてきた。唇の色が青インキをつけたように、ハッキリ死んでいた。

 朝は寒かった。明るくなってはいたが、まだ三時だった。かじかんだ手を懐(ふところ)につッこみながら、背を円るくして起き上ってきた。監督は雑夫や漁夫、水夫、火夫の室まで見廻って歩いて、風邪(かぜ)をひいているものも、病気のものも、かまわず引きずり出した。

 風は無かったが、甲板で仕事をしていると、手と足の先きが擂粉木(すりこぎ)のように感覚が無くなった。雑夫長が大声で悪態をつきながら、十四、五人の雑夫を工場に追い込んでいた。彼の持っている竹の先きには皮がついていた。それは工場で怠(なま)けているものを機械の枠越(わくご)しに、向う側でもなぐりつけることが出来るように、造られていた。

「昨夜(ゆうべ)出されたきりで、ものも云えない宮口を今朝からどうしても働かさなけアならないって、さっき足で蹴(け)ってるんだよ」

 学生上りになじんでいる弱々しい身体の雑夫が、雑夫長の顔を見い、見いそのことを知らせた。

「どうしても動かないんで、とうとうあきらめたらしいんだけど」

 其処(そこ)へ、監督が身体をワクワクふるわせている雑夫を後からグイ、グイ突きながら、押して来た。寒い雨に濡(ぬ)れながら仕事をさせられたために、その雑夫は風邪をひき、それから肋膜(ろくまく)を悪くしていた。寒くないときでも、始終身体をふるわしていた。子供らしくない皺(しわ)を眉(まゆ)の間に刻んで、血の気のない薄い唇を妙にゆがめて、疳(かん)のピリピリしているような眼差(まなざ)しをしていた。彼が寒さに堪えられなくなって、ボイラーの室にウロウロしていたところを、見付けられたのだった。

 出漁のために、川崎船をウインチから降していた漁夫達は、その二人を何も云えず、見送っていた。四十位の漁夫は、見ていられないという風に、顔をそむけると、イヤイヤをするように頭をゆるく二、三度振った。

「風邪をひいてもらったり、不貞寝(ふてね)をされてもらったりするために、高い金払って連れて来たんじゃないんだぜ。――馬鹿野郎、余計なものを見なくたっていい!」

 監督が甲板を棍棒(こんぼう)で叩いた。

「監獄だって、これより悪かったら、お目にかからないで!」

「こんなこと内地(くに)さ帰って、なんぼ話したって本当にしねんだ」

「んさ。――こったら事って第一あるか」

 スティムでウインチがガラガラ廻わり出した。川崎船は身体を空にゆすりながら、一斉に降り始めた。水夫や火夫も狩り立てられて、甲板のすべる足元に気を配りながら、走り廻っていた。それ等のなかを、監督は鶏冠(とさか)を立てた牡鶏(おんどり)のように見廻った。

 仕事の切れ目が出来たので、学生上りが一寸の間風を避けて、荷物のかげに腰を下していると、炭山(やま)から来た漁夫が口のまわりに両手を円く囲んで、ハア、ハア息をかけながら、ひょいと角を曲ってきた。

「生命(えのぢ)的(まと)だな!」それが――心からフイと出た実感が思わず学生の胸を衝(つ)いた。「やっぱし炭山と変らないで、死ぬ思いばしないと、生(え)きられないなんてな。――瓦斯(ガス)も恐(お)ッかねど、波もおっかねしな」

 昼過ぎから、空の模様がどこか変ってきた。薄い海霧(ガス)が一面に――然(しか)しそうでないと云われれば、そうとも思われる程、淡くかかった。波は風呂敷でもつまみ上げたように、無数に三角形に騒ぎ立った。風が急にマストを鳴らして吹いて行った。荷物にかけてあるズックの覆(おお)いの裾(すそ)がバタバタとデッキをたたいた。

「兎が飛ぶどオ――兎が!」誰か大声で叫んで、右舷のデッキを走って行った。その声が強い風にすぐちぎり取られて、意味のない叫び声のように聞こえた。

 もう海一面、三角波の頂きが白いしぶきを飛ばして、無数の兎があたかも大平原を飛び上っているようだった。――それがカムサツカの「突風」の前ブレだった。にわかに底潮の流れが早くなってくる。船が横に身体をずらし始めた。今まで右舷に見えていたカムサツカが、分らないうちに左舷になっていた。――船に居残って仕事をしていた漁夫や水夫は急に周章(あわ)て出した。

 すぐ頭の上で、警笛が鳴り出した。皆は立ち止ったまま、空を仰いだ。すぐ下にいるせいか、斜め後に突き出ている、思わない程太い、湯桶(ゆおけ)のような煙突が、ユキユキと揺れていた。その煙突の腹の独逸(ドイツ)帽のようなホイッスルから鳴る警笛が、荒れ狂っている暴風の中で、何か悲壮に聞えた。――遠く本船をはなれて、漁に出ている川崎船が絶え間なく鳴らされているこの警笛を頼りに、時化(しけ)をおかして帰って来るのだった。

 薄暗い機関室への降り口で、漁夫と水夫が固り合って騒いでいた。斜め上から、船の動揺の度に、チラチラ薄い光の束が洩(も)れていた。興奮した漁夫の色々な顔が、瞬間々々、浮き出て、消えた。

「どうした?」坑夫がその中に入り込んだ。

「浅川の野郎ば、なぐり殺すんだ!」殺気だっていた。

 監督は実は今朝早く、本船から十哩ほど離れたところに碇(とま)っていた××丸から「突風」の警戒報を受取っていた。それには若(も)し川崎船が出ていたら、至急呼戻すようにさえ附け加えていた。その時、「こんな事に一々ビク、ビクしていたら、このカムサツカまでワザワザ来て仕事なんか出来るかい」――そう浅川の云ったことが、無線係から洩れた。

 それを聞いた最初の漁夫は、無線係が浅川ででもあるように、怒鳴りつけた。「人間の命を何んだって思ってやがるんだ!」

「人間の命?」

「そうよ」

「ところが、浅川はお前達をどだい人間だなんて思っていないよ」

 何か云おうとした漁夫は吃(ども)ってしまった。彼は真赤になった。そして皆のところへかけ込んできたのだった。

 皆は暗い顔に、然し争われず底からジリ、ジリ来る興奮をうかべて、立ちつくしていた。父親が川崎船で出ている雑夫が、漁夫達の集っている輪の外をオドオドしていた。ステイが絶え間なしに鳴っていた。頭の上で鳴るそれを聞いていると、漁夫の心はギリ、ギリと切り苛(さ)いなまれた。

 夕方近く、ブリッジから大きな叫声が起った。下にいた者達はタラップの段を二つ置き位にかけ上った。――川崎船が二隻近づいてきたのだった。二隻はお互にロープを渡して結び合っていた。

 それは間近に来ていた。然し大きな波は、川崎船と本船を、ガタンコの両端にのせたように、交互に激しく揺り上げたり、揺り下げたりした。次ぎ、次ぎと、二つの間に波の大きなうねりがもり上って、ローリングした。目の前にいて、中々近付かない。――歯がゆかった。甲板からはロープが投げられた。が、とどかなかった。それは無駄なしぶきを散らして、海へ落ちた。そしてロープは海蛇のように、たぐり寄せられた。それが何度もくり返された。こっちからは皆声をそろえて呼んだ。が、それには答えなかった。漁夫達の顔の表情はマスクのように化石して、動かない。眼も何かを見た瞬間、そのまま硬(こ)わばったように動かない。――その情景は、漁夫達の胸を、眼(ま)のあたり見ていられない凄(すご)さで、えぐり刻んだ。

 又ロープが投げられた。始めゼンマイ形に――それから鰻(うなぎ)のようにロープの先きがのびたかと思うと――その端が、それを捕えようと両手をあげている漁夫の首根を、横なぐりにたたきつけた。皆は「アッ!」と叫んだ。漁夫はいきなり、そのままの恰好(かっこう)で横倒しにされた。が、つかんだ! ――ロープはギリギリとしまると、水のしたたりをしぼり落して、一直線に張った。こっちで見ていた漁夫達は、思わず肩から力を抜いた。

 ステイは絶え間なく、風の具合で、高くなったり、遠くなったり鳴っていた。夕方になるまでに二艘を残して、それでも全部帰ってくることが出来た。どの漁夫も本船のデッキを踏むと、それっきり気を失いかけた。一艘は水船になってしまったために、錨(いかり)を投げ込んで、漁夫が別の川崎に移って、帰ってきた。他の一艘は漁夫共に全然行衛不明だった。

 監督はブリブリしていた。何度も漁夫の部屋へ降りて来て、又上って行った。皆は焼き殺すような憎悪(ぞうお)に満ちた視線で、だまって、その度に見送った。

 翌日、川崎の捜索かたがた、蟹(かに)の後を追って、本船が移動することになった。「人間の五、六匹何んでもないけれども、川崎がいたまし」かったからだった。

 朝早くから、機関部が急がしかった。錨を上げる震動が、錨室と背中合せになっている漁夫を煎豆(いりまめ)のようにハネ飛ばした。サイドの鉄板がボロボロになって、その度にこぼれ落ちた。――博光丸は北緯五十一度五分の所まで、錨をなげてきた第一号川崎船を捜索した。結氷の砕片(かけら)が生きもののように、ゆるい波のうねりの間々に、ひょいひょい身体(からだ)を見せて流れていた。が、所々その砕けた氷が見る限りの大きな集団をなして、あぶくを出しながら、船を見る見るうちに真中に取囲んでしまう、そんなことがあった。氷は湯気のような水蒸気をたてていた。と、扇風機にでも吹かれるように「寒気」が襲ってきた。船のあらゆる部分が急にカリッ、カリッと鳴り出すと、水に濡れていた甲板や手すりに、氷が張ってしまった。船腹は白粉(おしろい)でもふりかけたように、霜の結晶でキラキラに光った。水夫や漁夫は両頬を抑(おさ)えながら、甲板を走った。船は後に長く、曠野(こうや)の一本道のような跡をのこして、つき進んだ。

 川崎船は中々見つからない。

 九時近い頃になって、ブリッジから、前方に川崎船が一艘浮かんでいるのを発見した。それが分ると、監督は「畜生、やっと分りゃがったど。畜生!」デッキを走って歩いて、喜んだ。すぐ発動機が降ろされた。が、それは探がしていた第一号ではなかった。それよりは、もっと新しい第36号と番号の打たれてあるものだった。明らかに×××丸のものらしい鉄の浮標(ヴイ)がつけられていた。それで見ると×××丸が何処(どこ)かへ移動する時に、元の位置を知るために、そうして置いて行ったものだった。

 浅川は川崎船の胴体を指先きで、トントンたたいていた。

「これアどうしてバンとしたもんだ」ニャッと笑った。「引いて行くんだ」

 そして第36号川崎船はウインチで、博光丸のブリッジに引きあげられた。川崎は身体を空でゆすりながら、雫(しずく)をバジャバジャ甲板に落した。「一(ひと)働きをしてきた」そんな大様な態度で、釣り上がって行く川崎を見ながら、監督が、

「大したもんだ。大したもんだ!」と、独言(ひとりごと)した。

 網さばきをやりながら、漁夫がそれを見ていた。「何んだ泥棒猫! チエンでも切れて、野郎の頭さたたき落ちればえんだ」

 監督は仕事をしている彼らの一人々々を、そこから何かえぐり出すような眼付きで、見下しながら、側を通って行った。そして大工をせっかちなドラ声で呼んだ。

 すると、別な方のハッチの口から、大工が顔を出した。

「何んです」

 見当外(はず)れをした監督は、振り返ると、怒りッぽく、「何んです? ――馬鹿。番号をけずるんだ。カンナ、カンナ」

 大工は分らない顔をした。

「あんぽんたん、来い!」

 肩巾(かたはば)の広い監督のあとから、鋸(のこぎり)の柄を腰にさして、カンナを持った小柄な大工が、びっこでも引いているような危い足取りで、甲板を渡って行った。――川崎船の第36号川崎船」になってしまった。

「これでよし。これでよし。うッはア、様(ざま)見やがれ!」監督は、口を三角形にゆがめると、背のびでもするように哄笑(こうしょう)した。

 これ以上北航しても、川崎船を発見する当がなかった。第三十六号川崎船の引上げで、足ぶみをしていた船は、元の位置に戻るために、ゆるく、大きくカーヴをし始めた。空は晴れ上って、洗われた後のように澄んでいた。カムサツカの連峰が絵葉書で見るスイッツルの山々のように、くっきりと輝いていた。

 行衛不明になった川崎船は帰らない。漁夫達は、そこだけが水溜(たま)りのようにポツンと空いた棚から、残して行った彼等の荷物や、家族のいる住所をしらべたり、それぞれ万一の時に直ぐ処置が出来るように取り纏(まと)めた。――気持のいいことではなかった。それをしていると、漁夫達は、まるで自分の痛い何処かを、覗(のぞ)きこまれているようなつらさを感じた。中積船が来たら托送(たくそう)しようと、同じ苗字(みょうじ)の女名前がその宛(あて)先きになっている小包や手紙が、彼等の荷物の中から出てきた。そのうちの一人の荷物の中から、片仮名と平仮名の交った、鉛筆をなめり、なめり書いた手紙が出た。それが無骨な漁夫の手から、手へ渡されて行った。彼等は豆粒でも拾うように、ボツリ、ボツリ、然(しか)しむさぼるように、それを読んでしまうと、嫌(いや)なものを見てしまったという風に頭をふって、次ぎに渡してやった。――子供からの手紙だった。

 ぐずりと鼻をならして、手紙から顔を上げると、カスカスした低い声で、「浅川のためだ。死んだと分ったら、弔い合戦をやるんだ」と云った。その男は図体の大きい、北海道の奥地で色々なことをやってきたという男だった。もっと低い声で、

「奴、一人位タタキ落せるべよ」若い、肩のもり上った漁夫が云った。

「あ、この手紙いけねえ。すっかり思い出してしまった」

「なア」最初のが云った。「うっかりしていれば、俺達だって奴にやられたんだで。他人(ひと)ごとでねえんだど」

 隅(すみ)の方で、立膝(たてひざ)をして、拇指(おやゆび)の爪(つめ)をかみながら、上眼をつかって、皆の云うのを聞いていた男が、その時、うん、うんと頭をふって、うなずいた。「万事、俺にまかせれ、その時ア! あの野郎一人グイとやってしまうから」

 皆はだまった。――だまったまま、然し、ホッとした。

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