南半球五万哩

36話 第五、北極海観光日記 三六、北極海観光の一行

983字 約2分 2011年10月25日 公開

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 明治四十四年七月、英京ロンドン客中にわかに思い立ち、北極海観光の一行に加わり、欧州最北地点なるノルウェー・ノールカップにおける夜半の太陽を望見せんことを期し、パケット会社の観光船エーボン号に搭乗することを約す。かくして二十一日(金曜)炎晴をおかして、午前十一時半、キングズ・クロス停車場より臨時汽車に駕し、グリムズビー港に至りて乗船す。その鉄道里程百五十五マイルあり。エーボン号は一万一千七十三トンにして、上等客室四百五十人をいるるべき設備あり。実に華美を極めたる客船なり。乗客総計二百八十三人のうち、男百四十二人、女百四十一人、その女子のうち、既婚者七十四人、未婚者六十七人、みな上流の紳士令嬢にして、英人過半を占め、米人これに次ぎ、その他はフランス人、ドイツ人、南アフリカ人等なり。

 午後六時出航。天気清朗、風波穏静、海水油のごとく、夕照朱のごとし。汽煙直立して動かず。漁舟、商船去来たえず。終夜、英蘭東北岸に沿いて北走す。灯台前後相迎送し、一時に四、五の灯光に応接するあり。ときに一詩を賦す。

虞林港外夕陽傾、船向北氷洋上行、英北灯台何処尽、一光相送一光迎。

虞林(グリムズビー)港外に夕日が沈もうとし、船は北氷洋上に向かって行く。英国の北の灯台はいずこで終わるのであろうか、一灯台の光に送られると次の灯台の光が迎えてくれるのである。)

 この日、意外に炎暑を覚え、わが日本の夏に会するの思いをなす。夜に入るも減暑せざりしが、暁天に至りてにわかに冷気を催す。当夕は陰暦月末に近く、暗夜なるも、満天の星光炳然たり。

 二十二日、晴れ。朝来、北風冷を送り来たり、夏衣を脱して冬衣を襲う。海上白波を翻す。スコットランドの連綿たる丘陵を左方に目送しつつ、午前十時リース湾内に入る。エジンバラの市街およびフォース・ブリッジの大橋梁を望む。午十二時、さらに出港して北進す。北風いよいよ加わり、夜に入り寒暖五十四、五度に下がる。九時に日没するも、十一時後まで西天に余光をとどめ、あたかも月夜のごとし。詩をもって夜景を述ぶ。

海禽飛去欲斜陽、一帯青山蘇国長、看到夜闌天未暗、波光雲影両蒼茫。

(海鳥が飛び去って太陽は斜めにあり、一帯の青山は蘇国(スコットランド)の長大さを示す。真夜中に至るも空は暗くならず、波のきらめきと雲の影はふたつながらひろびろと果てもなく見えた。)

 その緯度は樺太の北端よりはるかに北方にあり。

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