南半球五万哩

46話 第六、欧州大陸紀行 四六、デンマーク行

1,177字 約2分 2011年10月25日 公開

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 八月六日(日曜)、晴れ。午前十時半発にてデンマークに向かう。スウェーデンはノルウェーと全く地勢を異にし、平原広野多く、したがって農業大いに開け、市外はみな農田なり。昨今麦すでに熟し、おおよそ刈り尽くせり。

瑞典の原は露士亜に連りて、雲のやどらん山の端もなし

林野茫茫駅路長、麦田繞屋半村黄、隴頭尽日児扶老、八月典州農事忙。

(林と野ははるかに続き、駅への道は遠い。麦の畑が家をめぐり村の半ばは黄色に染まっている。畑のうねのかなたに一日中児童が老人をたすけて、八月の典州(スウェーデン)は農事に多忙である。)

 車窓より村落の農家を望むに、屋根は赤瓦またはブリキを赤く塗りたるを用い、木壁もまた赤く塗り、緑樹の間に紅を点ずるの観あり。しかして風景の賞すべきものあらず。九時半マルメ駅に着す。これより渡船に駕して海峡を渡る。マルメの街灯のいまだ隠れざるうちに、デンマーク首都コペンハーゲンの灯台を認む。ときに煙月微茫、清風船に満ち、すこぶる幽趣あり。

やる舟路マルモのあかり消えぬ間に、コペンハゲンの灯火を見る

烟月微茫檣影孤、風収嗹海静如湖、電光一射灯台照、暗裏分明認忽都。

(けぶる月がかすかに、帆柱の姿も孤独に見え、風はおさまって(デンマーク)の海は静かで湖のようである。電光のひとすじ照らすのは灯台の灯であり、暗いなかにもすっきりと忽都(コペンハーゲン)がみとめられる。)

 この間、汽船来往はなはだ頻繁なり。十一時半、コペンハーゲン市に着船す。税関の検閲を終わりて旅店を探るに、たいていみな空室なし。一時後ようやく入宿す。

 七日、晴れ。終日市内を散歩し、王宮、市庁、寺院等を一覧し、チボリー公園に入りて小休し、ラウント高塔にのぼりて全市を一瞰す。しかして、いずれに向かいて遠望を放つも、山影の目に触るるなし。同市は人口五十一万四千を有し、スカンジナビア三国中の最大都なり。毎夕チボリー園内には、納涼および遊覧者群集す。そのうちには種々の興行ものありて、わが浅草公園に似たり。午後八時、ベルリン行きの急行に投ず。市外はすべて農田にして、風車の転々として晩風に舞うを見る。夜に入り、明月清風の旅情を慰むるあり。これに加うるに、前後二回汽船にて汽車を渡す所ありて、壮快極まりなし。当夕所吟数首あり。

一路秋生冷客衣、風車転転夕陽微、忽辺城外茫如海、遥見牧童引犢帰。

(一路に秋の気配が生じて旅人の衣を冷やし、風車はめぐりて夕陽はかすかになる。忽辺(コペンハーゲン)の市外のあたりはひろびろとして海のごとく、はるかに牧童が子牛をひいて帰るのが見えた。)

嗹国江山送壮遊、客程夜半到津頭、汽船忽載汽車去、夢覚初知入独州。

(デンマーク)国の川や山はさかんな旅遊を送ってくれる。旅人の行くところ、夜半に渡し場に至る。汽船は急いで汽車をのせて行き、夢よりさめて、はじめて(ドイツ)国に入ったことを知ったのである。)

波の上を今宵汽車にて渡りけり、明日は船にて山に上らん

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