東洋学人を懐う

9話 理想の実現を楽んで慰めり

487字 約1分 2018年9月6日 公開

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 しかし我輩は梓(あずさ)君の精神は千古不滅であって、政治上、教育上、必ずや早晩その理想が実現さるるに相違ないという自信を以て、強(しい)て自ら慰めておった。即ち政治上に於ては、梓君が我輩等と共に力を尽したる国会は開設せられ、その著国憲汎論(こっけんはんろん)は世に出(い)でて、その精神を伝え、以て帰向に迷った人心の蒙(もう)を啓き、教育上に於ては梓君の心血を注いだ東京専門学校が今や大いに発展して早稲田大学となり、早稲田大学は更に進んで第二期の発展をなさんとしている。創立の当時は財政に窮乏(きゅうぼう)してその発達は頗(すこぶ)る困難であったが、またそれを救治せんとて企てた梓君の事業計画はあたかも二兎(にと)を追うの観があったが、近来社会一般の人心は漸(ようや)く教育を重んじ且つその事業に心を傾くる様になって来たから、今後は梓君の精神の宿っておるところの早稲田大学も、世人の同情に依って完全なるユニバーシチーとなるのは指を屈して待つべきであろうと思う。

 また梓君が書籍屋の番頭となって経営されたる東洋館は、今その一は冨山房(ふざんぼう)となり、その一は早稲田大学出版部となって現存している。未だ大なる成功とはいえないが、いずれも相当に発展して尠(すく)なからず社会に貢献している。

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