吉田松陰

29話 第二十 事業と教訓

505字 約1分 2017年8月4日 公開

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「真個(しんこ)関西志士の魁(さきがけ)、英風我が邦を鼓舞し来れり」。これ彼が高弟高杉晋作の彼を賛するの辞、言い尽(つく)して余蘊(ようん)なし。的(まこと)にこれ彼が事業の断案といわざるべからず。彼は維新革命の大勢より生れ、その大勢に鉄鞭を加えたり。彼は鼓舞者なり、彼は先動者にあらず。彼は先動者なり、成功者にあらず。

 彼は維新革命の健児なり、然(しか)れどももし維新革命の功、専(もっぱ)ら彼に在(あ)りといわば、これ彼を誣(し)いたるなり。彼は死後といえども、他人の功を窃(ぬす)んで、彼に与うるが如き拙鄙(せっぴん)なる追従者を容(い)るる能(あた)わず。

 然(しか)れども彼の事業は短けれども、彼の教訓は長し。為す所は多からざるも、教うる所は大なり。維新革命の健児としての彼の事業は、あるいは歴史の片影に埋もるべし。然(しか)れども革新者の模範として、日本男児の典型として、長く国民の心を燃すべし。彼の生涯は血ある国民的詩歌(しいか)なり。彼は空言を以て教えず、活動を以て教えたり。この教訓にして不朽ならば、彼もまた不朽なり。即ち松陰死すもなお死せざるなり。

 彼が殉難者としての血を濺(そそ)ぎしより三十余年、維新の大業半(なか)ば荒廃し、さらに第二の維新を要するの時節は迫りぬ。第二の吉田松陰を要する時節は来りぬ。彼の孤墳は、今既に動きつつあるを見ずや。

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